クラシック音楽 新譜CD情報


2021年4月26日

★ピエール・ブーレーズ指揮NHK交響楽団のワーグナー: 楽劇「トリスタンとイゾルデ」 (全曲)

ピエール・ブーレーズ

ワーグナー: 楽劇「トリスタンとイゾルデ」 (全曲)

演出、装置、衣裳:ウィーラント・ワーグナー

指揮:ピエール・ブーレーズ

管弦楽:NHK交響楽団

独唱:トリスタン: ヴォルフガング・ヴィントガッセン (テノール)
   イゾルデ: ビルギット・ニルソン (ソプラノ)
   国王マルケ: ハンス・ホッター (バス・バリトン)
   クルヴェナル: フランス・アンダーソン (バス)
   ブランゲーネ: ヘルタ・テッパー (アルト)
   メロート: セバスチャン・ファイアジンガー (テノール)
   牧童、若い船乗り: ゲオルク・パスクーダ (テノール)
   舵手: ゲルト・ニーンシュテット (バス)

合唱:大阪国際フェスティバル合唱団

録音: 1967年4月10日、フェスティバルホール (ライヴ録音)

CD:キングインターナショナル KKC-2188~90

 指揮のピエール・ブーレーズ(1925年―2016年)は、フランス、ロワール県の出身。第2次世界大戦後のフランスのクラシック音楽界で活躍した作曲家、指揮者、音楽教育家。現代音楽界の重鎮にして、近現代音楽の最高の解釈者だった。高等学校では数学を専攻するが、やがて音楽の道に進む。パリ音楽院でオリヴィエ・メシアンに学び、40年代半ばから作曲活動を開始し、新鋭作曲家として注目を集める。1970年代にフランス国立の「IRCAM(音楽/音響の探究と調整の研究所)」を創設し、総裁を務め、フランスをはじめヨーロッパ現代音楽文化を統合するための活動を展開。1991年IRCAM所長を辞任した後も、積極的に演奏、作曲活動を展開した。主な作品には、「フルートとピアノのためのソナチネ」「ピアノ・ソナタ第1番」「デリーヴ」「メモリアル」「二重の影の対話」「カミングズは詩人である」などがある。指揮者としては、クリーヴランド管弦楽団音楽監督、BBC交響楽団首席指揮者、ニューヨーク・フィルハーモニック音楽監督、シカゴ交響楽団音楽監督などを歴任。主な受賞歴は、第1回「高松宮殿下記念世界文化賞」(1989年)、「ウルフ賞」芸術部門(2000年)、「グラミー賞」クラシック現代作品部門(2000年)、「グロマイヤー賞」作曲部門(2001年)、「京都賞」思想・芸術部門音楽分野(2009年)など。

 このCDは、ブーレーズ唯一の「トリスタンとイゾルデ」盤。というより後にも先にもブーレーズ生涯ただ一度の上演で、文化遺産に値する録音。1967年の大阪国際フェスティバルに、ブーレーズの指揮、バイロイトからの引越し公演でワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」が上演され、当時の日本音楽界の大きな話題となった。ヴィーラント・ワーグナーの演出、ヴィントガッセン、ニルソン、ホッターら最高の歌手陣、NHK交響楽団という豪華キャストによる今日の感覚からも空前絶後の公演音源が初登場。フェスティバルホールをバイロイト祝祭劇場風に改造までして、非常に高額な入場料も話題となったが、聴衆を1963年のベルリン・ドイツ・オペラによる本邦初演以上の感動に巻き込んだとされる。そのスタッフたちの熱意、聴衆の真剣な姿勢と強い緊張感が半世紀以上を経てもまざまざと伝わってくる。

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