2010年11月14日
ポール・トルトゥリエ(1914年―1990年) 出身国:フランス
バッハ:無伴奏チェロ組曲
チェロ:ポール・トルトゥリエ
CD:東芝EMI TOCE-3362?63
ポール・トルトゥリエ (1914年―1990年)は、ピエール・フルニエ、アンドレ・ナバラ、モーリス・ジャンドロンなどとともに戦後活躍したフランスの著名なチェリストの一人であった。バッハの無伴奏チェロ組曲というと神様・カザルスのCDを誰もが第一に推すが、やはり録音が万全ではないことからくる音の硬さに、私などはどうももう一つ触手が伸びないというのが本音のところだ。この点、今回のCDのポール・トルトゥリエのバッハの無伴奏チェロ組曲は、録音の音質がチェロの持つ奥深いそして男性的な音色が存分楽しめるところからして、第一の関門はクリアしている。そして、肝心の演奏自体であるが、誠に優雅に、あたたかく曲全体を包み込むように、包容力を持った雰囲気が何とも好ましい。一方では、バッハの持つ何か毅然とした印象を与える曲の流れには、敢然と立ち向かい、決して情緒だけに溺れない強い精神力も聴きとることができ、実にバランスよくまとまった演奏になっている。