2010年11月14日
シューベルト:ピアノソナタ第13番/第14番<東京公演:ライブ録音>
ピアノ:スヴャトスラフ・リヒテル
CD:ビクター音楽産業 VDC-1070
ピアノの巨人 スヴャトスラフ・リヒテル(1915年―1997年)を聴くたびに、私はその類まれな強靭な精神力にひれ伏すしかない。何回聴いてもその確信に満ちたピアノを叩くタッチは、「あ!これが本来のピアノの持つ無限の力を引き出すことができる、リヒテルにしかできない技なのだ」と思わざるをえない。リヒテルのピアノ演奏を聴いた後、他のピアニストの演奏を聴いても、何かひ弱で、ピアノの持つ可能性の一部しか表現し切れてないような感じがして、もどかしい。とは言っても、リヒテルはただピアノの強い面ばかりを強調するのではなく、繊細極まりない微妙なニュアンスの表現にも長けていて(今回のCDのシューベルトのピアノソナタ第13番がそのいい例)、表現の幅の広さにも圧倒される思いがする。つまり、リヒテルのピアノ演奏は、いつも全力投球で、一部の隙もないところが長所であり、正統派ピアニストの面目躍如といったところなのだ。