2010年11月13日
モーツアルト:ピアノソナタK330/K331/K333/K545
ピアノ:イングリット・ヘブラー
CD:日本グラモフォン 420 251-2
モーツァルトのピアノソナタには名盤が数多くある。レコードの時代リリー・クラウス、ギーゼキング、CDのクララ・ハスキル、グレングールド、ピリスなどがその代表的な例である。それぞれ個性的なピアニストなので、いずれがいいかは、人それぞれの好みになろう。ただ、ヘブラーとグールドが両極端にあることだけは確かなことだ。グールドはあまりに自己中心的な解釈のため、ついていけない人も多い。それに対しヘブラーは万人の支持を得られるような名演である。ヘブラーのモーツァルトについていけない人はほとんどいない。それほど万人受けするにもかかわらず、ヘブラーがすごいのはモーツァルトの言いたいことをすべて楽譜から引き出していることだ。もし、モーツァルトがヘブラーの演奏を聴いたならば、自分が意図した以上に曲が仕上がっていることに驚くのではないか。ヘブラーのモーツァルトは天国的な音を響かせながら、一方では現代にマッチした何かが隠されている。このことがヘブラーをしてモーツァルト弾きの名手たらしめている所以であろう。