2010年11月14日
?前橋汀子 ベスト・セレクション
クライスラー:プニャーニのスタイルによるアレグロ/エルガー:愛の挨拶など
ヴァイオリン:前橋汀子
ピアノ:前橋由子/若林 顕/東 誠三
CD:ソニー・ミュージック・ジャパン・インターナショナル SICC 10070
前橋汀子の演奏は、師のシゲティと同じように、ただ表面的な美しさを追求するのではなく、あくまでその曲の本質に迫り、その曲の持つ究極の美しさを我々リスナーに教えてくれる。もう何回聴いたか分らないほど聴いてきた曲が、また新しい魅力を持って私の前に現れてくれる喜びは大きい。ムード音楽的に聴ける演奏もそれはそれで気軽に聴けて楽しいものであるが、前橋汀子の演奏のように、滋味溢れる演奏で、しかも日本人でなければ出せない感性が、今の私とって何ものにも代えがたく、懐かしさで心が満たされる。ともすると無国籍の技巧第一主義がはびこる現在のクラシック音楽界で、前橋汀子の存在感は今後一層光を増すことになろう。