クラシック チェリスト


バックナンバー 2010年 11月

2010年11月14日

ジャクリーヌ・デュ・プレ(1945年―1987年)  出身国:英国


シューマン:チェロ協奏曲

チェロ:ジャクリーヌ・デュ・プレ

指揮:ダニエル・バレンボイム

管弦楽:ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団

CD:EMI CDM 7 64626 2

 ジャクリーヌ・デュ・プレ は、英国オックスフォードに生まれ、4歳でチェロを始めた。12歳でBBC主催のコンサートで演奏を行い、16歳にして早くもチェロ演奏家として国際的な名声を得るなど、天才チェリストとして国際的な名声を今に残す。1966年21歳で、このCDでも共演しているピアニスト兼指揮者のダニエル・バレンボイムと結婚。以後2人で名演盤を残している。1971年26歳のときに指先に異常が起こり、多発性硬化症と診断され、28歳でチェロ演奏家としての活動を中止。1975年にはエリザベス女王からOBE勲章を授与されている。結局、この病のため1987年42歳の若さででこの世を去った。デュ・プレは病床で死にたくないと泣き叫んだそうだが、チェロ演奏家としてこれから本格的な演奏活動に入るときだけに、“悲劇のチェリスト”として今でも多くの人々の胸を強く打つ。

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2010年11月14日

ピエール・フルニエ(1906年―1986年)  出身国:フランス


ドボルザーク:チェロ協奏曲他

演奏:チェロ=ピエール・フルニエ

CD:独グラモフォン 447 349?2

 ピエール・フルニエ のチェロの演奏は、折り目正しい紳士の振る舞いに似ている。どことなく気品があり、冷静に判断し、決して過度な動きはしない。この結果として、フルニエの演奏を聴くと知らないうちに心が安らぐことができる。そして何かゆっくりとした時に身をゆだねる心地よさがいい。ドボルザークのチェロ協奏曲は多くのチェリスト達によって録音されてきたが、フルニエのCDはこれらの中でも最も安定した、美しい音色に彩られている。

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2010年11月14日

ポール・トルトゥリエ(1914年―1990年)  出身国:フランス


ポール・トルトゥリエ(1914年―1990年)  出身国:フランス
バッハ:無伴奏チェロ組曲

チェロ:ポール・トルトゥリエ

CD:東芝EMI TOCE-3362?63

 ポール・トルトゥリエ (1914年―1990年)は、ピエール・フルニエ、アンドレ・ナバラ、モーリス・ジャンドロンなどとともに戦後活躍したフランスの著名なチェリストの一人であった。バッハの無伴奏チェロ組曲というと神様・カザルスのCDを誰もが第一に推すが、やはり録音が万全ではないことからくる音の硬さに、私などはどうももう一つ触手が伸びないというのが本音のところだ。この点、今回のCDのポール・トルトゥリエのバッハの無伴奏チェロ組曲は、録音の音質がチェロの持つ奥深いそして男性的な音色が存分楽しめるところからして、第一の関門はクリアしている。そして、肝心の演奏自体であるが、誠に優雅に、あたたかく曲全体を包み込むように、包容力を持った雰囲気が何とも好ましい。一方では、バッハの持つ何か毅然とした印象を与える曲の流れには、敢然と立ち向かい、決して情緒だけに溺れない強い精神力も聴きとることができ、実にバランスよくまとまった演奏になっている。

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2010年11月14日

ミッシャ・マイスキー(1948年生まれ)  出身国:ラトヴィア


ドボルザーク:チェロ協奏曲/シューマン:チェロ協奏曲

チェロ:ミッシャ・マイスキー

指揮:レナード・バーンスタイン
管弦楽:イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団

CD:ドイツ・グラモフォン 445 571?2

 ドボルザークのチェロ協奏曲は、チェロのミッシャ・マイスキーと指揮のバーンスタインが、がっぷりと四つに組んで両者一歩も引かずといった趣がする。特にバーンスタインの指揮ぶりは限りなくスケールの大きなもので、オーケストラの音が放射線状に外へ向かって発散される感じがして、とてもスタジオ録音では得られないものだ。マイスキーのチェロも浪々とした弾きっぷりで、類まれなドボルザークのチェロ協奏曲に仕上がっている。ドボルザークのチェロ協奏曲をこんなにも雄大に描ききった例はあまりないのではないか。一方、シューマンのチェロ協奏曲の方は、曲そのものの性格上ドボルザークほどオーケストラの見せ場が少なく、バーンスタインも押さえ気味だ。マイスキーはシューマンでも浪々とした演奏を奏でている。

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2010年11月14日

アンドレ・ナヴァラ(1911?1988年)  出身国:フランス


ショパン:チェロソナタ
リヒャルト・シュトラウス:チェロソナタ

チェロ:アンドレ・ナヴァラ
ピアノ:エリカ・キルチャー

CD:ビクター音楽産業 VDC?1014

 アンドレ・ナヴァラ (1911?1988年)は、フランスの名チェリスト。1926年にパリ音楽院に入り、1年後の16歳のとき1等賞をとり卒業するという天才振りを発揮した。1937年にウィーン国際コンクールで優勝して以来、世界的にその名が知られるようになり、日本でも数多くのレコード、CDを通してその名演奏家振りを印象づけた。演奏内容は、知的でスマートさに溢れており、いかにもフランスのミュージシャンといった感じがする。勿論、その経歴どおり、技術的にも最高のものを有しているが、それが表面にぎらぎら出さないところが逆に凄いチェリストだなという感が深い。流れるようにチェロを演奏するさまは、まるでバイオリンを弾いてるようで、聴き終わった後になんとも爽やかな印象を残してくれる希有なチェリストであった。このCDは、そのナヴァラがショパンとリヒャルト・シュトラウスのチェロソナタを演奏した貴重なCDである。

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2010年11月14日

ヤーノシュ・シュタルケル(1924年生まれ)  出身国:ハンガリー


シューマン:チェロ協奏曲
ラロ:チェロ協奏曲
サン=サーンス:チェロ協奏曲

チェロ:ヤーノシュ・シュタルケル

指揮:スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ
    アンタール・ドラティ(サン=サーンス)

管弦楽:ロンドン交響楽

CD:マーキュリー PHCP-1515

 このCDは3人の作曲家のチェロ協奏曲を1枚に納めたCDであるが、何と言っても主役はチェロのヤーノシュ・シュタルケル だ。ハンガリー生まれのチェロの巨匠シュタルケルの壮年期の圧倒的な演奏技巧が存分に発揮されているCDなのだ。私の趣味からすると、曲そのものの魅力、それにチェロという楽器の魅力がたっぷりと盛り込まれている曲であることなどから、シューマンのチェロ協奏曲を第一に挙げたい。ところでこのCDは、LP時代名録音で名を馳せたマーキュリーの“マーキュリー・リビング・プレゼンス”を基にCD化したものだけあって、現在でもその音を聴くと、その際立った臨場感に思わず圧倒されるほどだ。

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2010年11月14日

ムスティスラフ・ロストロポーヴィッチ(1927年―2007年)  出身国:ロシア


ブラームス:チェロ・ソナタ第1番/第2番

チェロ:ムスティスラフ・ロストロポーヴィッチ

ピアノ:ルドルフ・ゼルキン

CD:ユニバーサル ミュージック UCCG 5129

 このCDは、チェロのムスティスラフ・ロストロポーヴィッチ (1927年―2007年)とピアノのルドルフ・ゼルキン(1903年―1991年)が共演した貴重な録音である。2人とも、私のクラシック音楽リスナー歴の中で、その中心に存在した神様みたいな演奏家だ。今回聴いて見て、つくづく2人の、その卓越した音楽的技巧と、悠然として本道を堂々と歩む音楽的姿勢に改めて敬服させられた。もうこんな演奏家は出てこないのではないかとすら感じられてしまうほどだ。決して上辺だけの技巧に走らず、自分の考える演奏を淡々と確信を持って弾きこなす、という姿勢は曲の最初から最後まで一貫している。何か音楽に奉仕する聖職者みたいな感じなのだ。最近は、ともすると聴衆受けすることを第一に考える演奏家が多くなりつつあるように感じられる。そんな折、ロストロポーヴィッチとゼルキンが残した録音は、今後ますます輝きを増すのではないだろうか。

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2010年11月14日

パブロ・カザルス(1876年―1973年)  出身国:スペイン


シューマン:チェロ協奏曲

チェロ:パブロ・カザルス

指揮:ユージン・オーマンディ

管弦楽:プラド・フェスティバル・オーケストラ

CD:ソニー・ミュージック・エンターテインメント(フランス) SMK 58993

 シューマンのチェロ協奏曲は地味な存在ながら、一度聞くと忘れられない印象深い名曲だ。この名曲をチェロの巨匠というよりはクラシック音楽界のドンであったと言った方が当てはまるパブロ・カザルスが演奏するとどうなるか。協奏曲というと独奏楽器とオーケストラが協調して演奏を盛り上げるのが普通だ。ところがこのCDは独奏者のカザルスの後を終始オーケストラが追いかけるといった図式となっている。主役はあくまでチェロだということを再認識させてくれる演奏だ。そしてカザルスのチェロというと千変万化。強く前に押し出したかと思えば、少し経つと静かに緩やかにうたう。聴き手はその演奏に巻き込まれしまい、あたかもカザルスが作曲したかのような錯覚に陥るほどだ。やはりカザルスは神様だった。録音は、南部フランスのプラドで、1953年5月28日-29日に行われたとある。

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