2010年11月13日
~ヴァイオリン小品集~
ヴァイオリン:巌本真理
ピアノ:坪田昭三
CD:東芝EMI CZ309040
巌本真理の名を聞いてピンとくるの人は年配の方だろう。1979年(昭和54年)に亡くなっているので当然なことではある。彼女が第6回音楽コンクールに優勝しのが11歳の時で当時“天才少女ヴァイオリニスト”として広く知られることになる。1937年(昭和12年)のことである。このCDは彼女が残したレコードの復刻盤であるが、今聴いても楽しむことができる音質なのがうれしい。演奏内容はなんと素直に伸び伸びと弾いているのだろう。そして聴けば聴くほど引き込まれる。こんな演奏は今聴くことはできない。今は、何か他の演奏家とは違うことしなければ、誰も振り向いてくれない。この結果素直な演奏は影を消してしまったわけである。彼女のこのCDを聴くと、今の日本のクラシック音楽界が失ってしまった何かが残されている。それは演奏技術ではなく、心かもしれない。ピアノで名伴奏ぶりを聴かせる坪田昭三についても同じことが言える。