2010年12月29日
フランツ・コンヴィチュニー(1901年―1962年) 出身国:ドイツ
ベートーベン:交響曲全集/序曲集
演奏:フランツ・コンビチュニー指揮/ライプチヒ・ゲバントハウス管弦楽団
CD:独ETERNA 0020 005
コンビチュニーは玄人受けする指揮者だ。どちらかといえば職人芸に近い。ただ、職人芸といってもあくまで一流の職人であって、そんじょそこらの職人とは違う。フルトベングラーがオーケストラをぐいぐい引っ張る激情家、カラヤンが一部のすきもない合理主義者、チェビリダッケがオケの持つ能力を引っ張り出す策士家なのに対し、コンビチュニーはあくまで楽譜に忠実な音づくりをする名人といえるだろう。その昔、著名な音楽評論家の山根銀二氏がラジオで繰り返し紹介していたのが、コンビチュニーであった。音楽評論家としては最も信頼の置ける指揮者といえるのだろう。コンビチュニーと聞くと、すぐにラジオの音楽番組と山根銀二氏の名解説を思い出してしまい、懐かしさがこみ上げてくる。
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2010年12月29日
グィド・カンテルリ(1920年―1956年) 出身国:イタリア
モーツアルト:交響曲第29番
ベートーベン:交響曲第7番
シューベルト:交響曲第8番「未完成」
フランク:交響曲
指揮:グィド・カンテルリ
管弦楽:フィルハーモニア管弦楽団/NBC交響楽団(フランク)
CD:EMI CLASSICS CZS 5 68217 2
カンテルリの指揮のスタイルは、メンデルスゾーンがその曲が持つ姿を客観的な立場で指揮をして以来の伝統的指揮法によっている。当時流行ったヨーロッパにおける新即物主義がこの指揮法を後押ししたこともあって、現在まで連綿と続いているのである。この客観的指揮法のドンがトスカニーニとするなら、主観的(ロマン的)指揮法のドンはフルトヴェングラーなのである。このCDを聴くと、カンテルリはドン・トスカニーニの指揮ぶりにもっとも近い指揮者といわれている以上に、ほかの指揮者にない何物かを備えていることが聴き取れる。曲想を捻じ曲げないで指揮することは間違いないのではあるが、ただそれだけではなんとも退屈な演奏に終わってしまう。カンテルリの凄いところは、オーケストラが発する音そのものが実に生き生きと輝くのだ。
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2010年12月29日
ハンス・クナッパーツブッシュ(1888年―1965年) 出身国:ドイツ
モーツアルト:交響曲第39番/第40番/第41番
演奏:指揮=ハンス・クナッパーツブッシュ
ベルリン・オペラ管弦楽団/ウイーンフィルハーモニー管弦楽団
CD:PREISERRECORDS 90951
マエストロの東の横綱がフルトベングラーなら、西の横綱がクナッパーツブッシュという位置付けだ。フルトベングラーの指揮は、“振ると面食らう”と揶揄されたように、茫漠とした感情の嵐が吹きすさむダイナミックな演奏が身上だ。それに対しクナッパーツブッシュの指揮はスケールの大きさではフルトベングラーさえも上回り、現在まで比肩できる指揮者はいないほどだ。ただ、クナッパーツブッシュは感情に流されることなく、客観的に曲と接している。この辺が両マエストロの違いだ。
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2010年12月29日
ウィレム・メンゲルベルク(1871年―1951年) 出身国:オランダ
シューベルト:交響曲第7番「未完成」
交響曲第(8)9番「ザ・グレート」
指揮:ウィレム・メンゲルベルク
管弦楽団:アムステルダム・コンセトヘボウ管弦楽団
CD:phono-museum MENGELBERG EDITION Vol.1
このCDに収められたシューベルトの2つの交響曲は、1942年11月にコンセルトヘボウで録音された。ここでのメンゲルベルクは、「未完成」においては、男性的な指揮ぶりに徹しており、「未完成」の持つ図り知れない生命力を遺憾なく発揮しているのが印象的だ。現代の指揮者は「未完成」を振るとき、余りにもディテールに拘りすぎ、美しい「未完成」を描き過ぎるではないではなかろうか。これは、リスナーがそのようなもの要求するから、自然にそうなっただけと私は思っている。リスナーはただ受身で聴いていたのではダメなのだ。“「未完成」=美しい”だけではいけないのだ。男性的な力強さと生命力を持ったシンフォニーが「未完成」の真の姿であると思う。70年近く前のメンゲベルクのこの指揮ぶりは、このことをはっきりと示しており、その存在意義は今でも少しも薄れていないと私は思う。その意味でこのCDは歴史的名盤というより、私にとっては現役盤と肩を並べる位置づけである。一方、「ザ・グレート」の方は、「未完成」ほど力強くはないが、それでも雄大なシューベルト像を描き出そうとしている点は、「未完成」と同じである。
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