クラシック 指揮者


バックナンバー 2010年12月30日

2010年12月30日

セルジュ・チェリビダッケ(1912年―1996年)  出身地:ルーマニア


シューマン:交響曲第1~4番

指揮:セルジュ・チェリビダッケ

管弦楽:ミラノ交響楽団/ロンドン交響楽団/ミュンヘンフィルハーモニー

CD:ARTISTS FED 009.10(ライブ録音)

 チェビリダッケは、その強烈な個性から楽団員とのトラブルが多かった指揮者だと聞く。このシューマンの交響曲全集のライブ録音を聴くとその個性の一端が読み取れる。第1番と第4番はチェビリダッケの持ち味が存分に発揮された名演だ。第4番については、これまでフルトベングラーの名盤があるため目立たないが、チェビリダッケの第4番を聴くと、フルトベングラー盤を超える名盤と言っても間違いないほどの名演だ。

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2010年12月30日

ヴィクトール・デ・サバタ(1892年ー1967年)  出身国:イタリア


ベートーベン:交響曲第6番「田園」
レスピーギ:交響詩「ローマの噴水」他

指揮:ヴィクトール・デ・サバータ

管弦楽:聖チェチーリア国立音楽院管弦楽団

CD:伊EMI 081 4 83476 2

 これはオペラの指揮で有名なヴィクトール・デ・サバタが録音したCDである。何とも楽しい“田園”が目の前に広がる。何と言ったらよいのか、歌を歌いながら山の尾根を軽々とした足取りで進んでいく気分である。聴き込んでいくうちに自然に体が動き出してしまう。そうだ、そうなんだ、クラシック音楽だからといって、何も難しい顔を聴いているばかりが能ではない!このCDでデ・サバータは、オペラのようにドラマチックに田園交響曲を演じ、時にセクシーといっていいほどの指揮ぶりを発揮する。こんな指揮者が今いたら、クラシック音楽はさらに面白くなること請け合いだ。

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2010年12月30日

カレル・アンチェル (1908年―1973年)  出身国:チェコ


ドボルザーク:交響曲第8番

演奏:カレル・アンチェル指揮 アムステルダム・コンセルトヘボー管弦楽団

CD:TAHRA TAH124

 もともとドボルザークの交響曲第8番は親しみやすい曲であるが、チェコ出身のカレル・アンチェルが振ると一層親しみがわく。カレル・アンチェルの指揮ぶりは、非常に明確に曲想を表現するので誰にも聴きやすい。と同時に民族色というか、何か大地に根を張ったような健康な力強さが身上であった。スメタナの“わが祖国”などを指揮をさせたら右に出る者はいないといってもいいほどだ。このドボルザークの交響曲第8番も十八番の一つで、他の追随を許さない。

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2010年12月30日

カール・ベーム(1894年―1981年)  出身国:オーストリア


~ベーム、ウィーンフィル 1977東京ライブ~

モーツアルト:交響曲第29番
リヒャルト・シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」

リハーサル風景
ブラームス:交響曲第2番

指揮:カール・ベーム

管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

CD:TDK-OC 006

 モーツアルトの交響曲第29番は、ウィーンからザルツブルグに戻ったモーツアルトが1744年に作曲した、後期の交響曲にも繋がるような、非常に充実した内容を持つ、初期の交響曲である。第1楽章の出だしからして、ベームとウィーンフィルの名コンビは、これ以上考えられない程に安らぎに満ち、弦楽器の音色の微妙な変化を愉しむかのように演奏していく。これだけ聴くだけで、このコンビの巧みで自然な演出力の虜になってしまい、気分はもうモーツアルトの世界に釘づけとなること請け合い。第2楽章は、アンダンテのゆっくりとした楽章で、この高貴な雰囲気の中に身を置いていると、何か俗世間のことを一時忘れ去るような雰囲気に包まれる。ここでも、ベームとウィーンフィルのコンビは、考え得る最良の音楽をリスナーに届けてくれるのだから堪らない。第3楽章は、軽快なメヌエット。管楽器と弦楽器の掛け合いのような音づくりに酔わされる思いがする。第4楽章は、これまでのゆっくりとした雰囲気から、一気に交響曲らしい壮大な音づくりに大満足。

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2010年12月30日

フェレンツ・フリチャイ(1914年―1963年)  出身国:ハンガリー


チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」
         :ヴァイオリン協奏曲

指揮:フェレンツ・フリッチャイ

ヴァイオリン:ユーディ・メニューイン

管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(交響曲第6番「悲愴」)
     RIAS‐シンフォニーオーケストラ(現ベルリン・ドイツ交響楽団)

CD:ドイツ・グラモフォン 445 409‐2

 フェレンツ・フリッチャイがチャイコフスキー名曲を振ったのが今回のCDである。メリハリを身上とするフリッチャイが、ロシアの民族音楽の元祖みたいなチャイコフスキーを指揮したらどうなるのか?普通考えるとどうも相性が良くないと思いがちだが、意外にそうでもない。それは、フリッチャイの桁外れな情熱と、暗く、陰鬱なチャイコフスキーの情熱とがうまく混ざり合って、聴くものを圧倒する出来栄えとなっている。このCDでも、フリッチャイの指揮は一点の曖昧さもない。一方、チャイコフスキーの曲は、茫洋とした暗い情念を漂わせている。この二つの接点を考えてみると、チャイコフスキーの曲に、何か一本芯張り棒のようなようなものをフリッチャイが付け加えることによって、結果としてスケールの一回り大きな、しかも過去からの引きずった古臭いチャイコフスキー像に代わり、新鮮で筋肉質の近代的な新しいチャイコフスキー像の創造に成功したということができる。

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2010年12月30日

ジョージ・セル(1897年―1970年)  出身国:ハンガリー


チャイコフスキー:交響曲第5番

指揮:ジョージ・セル

管弦楽:クリーブランド管弦楽団

CD:ソニー CSCR 8202

 ジョージ・セルという指揮者の名前を聞けば即座にクリーブランド管弦楽団が思い浮かぶほど両者の関係は切っても切れない関係にある。その演奏を聴けば、この両者の結びつきは単なる指揮者とオーケストラの関係以上のものであることが分かろう。一部の隙のない演奏だがさりとてぎすぎすしたものではなく、むしろ伸びやかな印象を与える。その音色は丁度ビロードのような感触に感じられる。重厚感があるが、決して重々しくない。羽目を外さない演奏なのだが、飽きが来ず、味わいのある雰囲気をかもし出す。何か古き良きアメリカを象徴しているかのようだ。

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2010年12月30日

ユージン・オーマンディ(1899年―1985年)  出身国:ハンガリー


ショパン:バレエ音楽「レ・シルフィード」
ドリーブ:バレエ組曲「シルヴィア」
     バレエ組曲「コッペリア」
オッフェンバック:バレエ音楽「パリの歓び
ファリャ:バレエ「三角帽子」の三つの舞曲
グノー:歌劇「ファウスト」よりバレエ音楽

指揮:ユージン・オーマンディ

管弦楽:フィラデルフィア管弦楽団

CD:CBS/SONY 52DC 375-6

 このオーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団の名コンビにより、有名なバレエ音楽を収録したのがこのCDである。CDが市場に提供されてから2年半後にこのCDが発売されたようだが、今聴いてもその音はみづみづしく息づいているのは真にうれしいことだ。ライナーノートによると「このマスター・テープは、今回特に米CBSに依頼して、当時の3~4チャンネル・オリジナル・テープからデジタル2チャンネルに新たにトラックダウン(ニュー・リミックス)し直したもの」という。このためマスター・テープさながらの新鮮で迫力に溢れたフィラデルフィアサウンドを聴くことができる。例えば、ドリーブのコッペリアなどは、音だけを聴いてもバレリーナの踊りが自然と目に浮かび上がるほど、真に迫る演奏に感動させられる。クラシック音楽は、ベートーベンやブラームスあるはワグナーなど何か哲学みたいなものが背景にあるのが優れていて、バレエ音楽などは踊りの付随音楽と考えられがちだが、決してそんなことはない。オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団のこれらのバレエ音楽を聴くとそんな既成概念はどこかに吹っ飛んでしまうほどで、つくづく「クラシック音楽っていいな」と感じさせてくれる名盤となっている。

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2010年12月30日

オイゲン・ヨッフム(1902年―1987年)  出身国:ドイツ


ブラームス:交響曲全集

演奏:オイゲン・ヨッフム指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

CD:TOCE‐6927

 ブラームスの交響曲はベートーべンのそれと並び、これが交響曲だといった重さがある。ベートーベンが9つの交響曲を書いたのに対し、ブラームスは4つの交響曲で終わった。しかし、4つの交響曲がそれぞれ違うアプローチで書かれており、4つで十分と考えられる。このCDでヨッフムは素晴らしいブラームスを聴かせてくれる。一つの気負いもなく、静かにブラームスを奏でていくが、それがかえって重厚で、しかもスケールの大きな演奏となっている。フルトベングラーのブラームスは何か天才的で近寄りがたい雰囲気をかもし出すが、ヨッフムのブラームスは人生の伴侶として常に横にいてほしいような親しみを感じる。

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2010年12月30日

アンドレ・クリュイタンス(1905年―1967年)  出身国:ベルギー


ベートーベン:交響曲全集

演奏:アンドレ・クリュイタンス指揮

管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

CD:東芝EMI CC25-3745-47

 ドイツ人でない指揮者がドイツ音楽を演奏した場合の成功例、失敗例いろいろあるが、このアンドレ・クリュイタンスのベートーベン交響曲全集は成功例の典型的なものだろう。我々がお馴染みのベートーベン像は“意思の人”とか“理想主義者”とかいった神様みたいな存在を思い描くが、クリュイタンスはそんなベートーベン像はくそ食らえとでも言いたいように、純粋に音楽としてのベートーベン像を描ききる。そこには何の誇張もなければ、独善もない。ただ、自然な音楽が流れるだけだ。実はこれができるということは、裸のベートーベンのそのものを表現しきっているということを意味する。よく最高の演技は「演技せずただ自然に振舞うことだ」といわれるが、役者は何十年の修行を積まねばこの境地には至らない。クリュイタンスのベートベンを聴くと「指揮をせずただ自然に演奏する」といった高みに達していると言わざるをえない。ドイツ系の指揮者には思いもつかない境地であることは間違いない。

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2010年12月30日

ルドルフ・ケンペ(1910年―1976年)  出身国:ドイツ


ブラームス:交響曲第1~4番
       悲劇的序曲/ハイドンの主題による変奏曲

指揮:ルドルフ・ケンペ

管弦楽:ベルリンフィルハーモニー管弦楽団

CD:TESTAMENT(EMI Records) SBT 3054

 ドイツ人の指揮者のルドルフ・ケンペのこのCDは、最初はあまり印象に残ることはないが、何回も聴くうちにその真価がじわじわと心に沁みてきて、最後にはケンペの虜になってしまうという、独特の魅力が込められた隠れたる名盤なのである。通常指揮者はその指揮ぶりが、フルトヴェングラーみたいだとか(あまりいないが)、ワルターに似ているだとか、まるでトスカニーニみたいなど、と過去の巨匠たちの指揮に似ているといった捉え方をされることが多い。ところがケンペはどの巨匠とも異なり、独自の世界を展開する。そこが新鮮に映るし、魅力ともなっている。強いて挙げればシューリヒトに近いのかもしれない。しかしよく聴くと、シューリヒトは楽団員と一体化して自分の世界に引きずり込むという感じがするのに対し、ケンペはあくまで楽団員の自発性に期待し団員各自の能力を最大限に発揮させるようにもっていく。

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