クラシック ピアニスト


バックナンバー 2010年11月13日

2010年11月13日

内田光子(1948年生まれ)  出身国:日本


モーツアルト:ピアノソナタ第15番/ロンド イ短調/ピアノソナタ第18番

ピアノ:内田光子

CD:西独フィリップス 412?122

 内田光子の演奏するこのモーツアルトのCDを聴くと、完璧なほどなその構成美に圧倒される思いがする。これをみても、ちょっと普通の日本人の感覚を超えているということがいえるのではないか。ちょうど西欧の彫刻を音で表現しているかのようだ。これならヨーロッパで内田光子が高い評価を受けたことに合点がいく。聴き進むとなんだかギーゼキングのピアノの響きがする。絶対にリーリー・クラウスでもないし、ピリスでもない。ギーゼキングは新即物主義の旗手として見られていた。これは主観をなるべく排除し、楽譜に忠実に演奏するといった意味であろう。内田光子のモーツアルトを聴くとギーゼキング以上の新即物主義の演奏家ではないか、との思いを抱かざるを得ない。いずれにせよ、その完成度の高い演奏の質は特筆に価する。

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2010年11月13日

アルフレート・ブレンデル(1931年生まれ)  出身国:チェコ


シューベルト:即興曲Op.90/Op.142

ピアノ:アルフレート・ブレンデル

CD:西独フィリップス 411 040?2  
 
 シューベルトの即興曲集には昔から名演のレコード/CDが多数あり、件を競ってきた。古くはギーゼキング、リリー・クラウスなどの名盤を思い浮かべることができる。このブレンデルの即興曲集もこれらの名盤と比べ、少しの遜色もなく、肩を並べる内容となっている。流れるような指使い、強靭なタッチ、そして圧倒的なスピード感、どれをとっても超一流の技量であることが、聴いて取れる。そのため、聴いてい飽きが来ないのだ。次のフレーズはどう弾くのか、思わず引き込まれてしまう。あくまで正攻法の弾き方で、奇はてらわない。 

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2010年11月13日

イヴ・ナット(1890年―1956年)  出身国:フランス


シューマン:ウィーンの謝肉祭の道化/子供の情景/幻想小曲集/ピアノ協奏曲
      蝶々/アラベスク/子供の情景/クライスレリアーナ/3つのロマンツェ
      幻想曲/フモレスケ/交響的練習曲
      トッカータ/幻想小曲集/ノヴェレッテン

ピアノ:イヴ・ナット

指揮:ウジェーヌ・ビゴー
管弦楽:Orchestre Symphonique

CD:仏EMI CZS 7 671412

 イヴ・ナットは、フランスのピアニストではあるが、シューマンやベートーヴェンなどのドイツ人作曲家の作品を弾かせると、ドイツ人以上の深みのある、構成美が際立って優れたピアノ演奏を聴かせる。このアルバムでもシューマン独特のロマンの色濃い特徴を押さえて、実に魅力ある曲に仕上げている。中でもピアニストの力の差がはっきりと分る「ピアノ協奏曲」「クライスレリアーナ」「幻想曲」「フモレスケ」「交響的練習曲」の5曲は、これまで発売されたCDの中でも1、2を争うほどの出来栄えだと私には思われる。

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2010年11月13日

ウィリアム・カペル(1922年―1953年)  出身国:アメリカ


ハチャトリアン:ピアノ協奏曲(クーセヴィツキー指揮ボストン交響楽団)他

ピアノ:ウィリアム・カペル

CD:BMGビクター BVCC5202

 ウィリアム・カペル は、わずか31歳で航空機事故で没した米国の天才ピアニスト。よく“才気走る”という言葉が使われるが、カペルはこの言葉にぴったりのピアニストであった。特にこのCDのハチャトリアンやプロコフィエフのピアノ協奏曲を弾かせたら、現在に至るまでカペルの右に出るものはおそらくいない。確信に満ちたタッチ、そして心の底から音楽が溢れてきて、こぼれだすとでも言ったらいいのであろうか。リストのメフィスト・ワルツ第1番もこのCDに収められているが、CDのタイトルの横には「夭折した鬼才、カペルの貴重な名演、待望のCD化。“メフィスト・ワルツ”は録音史上に残る極めつけの名演。」と書かれているが、実際に聴いてみるとこのことが決して誇張でないことが分かる。

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2010年11月13日

ウィルヘルム・バックハウス(1884年―1969年)  出身国:ドイツ


ブラームス:ピアノ協奏曲第2番
モーツアルト:ピアノ協奏曲第27番

ピアノ:ウィルヘルム・バックハウス

指揮:カール・ベーム

管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

CD:DECCA 466 380‐2

 バックハウス のピアノ演奏は、伝統的なドイツピアノ音楽にしっかりと根付いて、安定感のある、どっしりとした構えがリスナーに圧倒的な印象を与える。若い頃は、卓越した技巧も加わり“鍵盤の獅子王”と呼ばれていたほどだ。ギーゼキング、ケンプそれにバックハウスを並べて聴くと、伝統的なドイツピアノ演奏という共通点以上に、もっと似通った何かが隠されているように思う。それは、ピアノに真摯に向き合い、あたかも聖職者が音楽の神にかしずいているかのように演奏し、その背後から我々リスナーがその演奏を聴いているように私には思える。そしていつも、その演奏空間にはピーンとした程よい緊張感の糸が張りめぐらされているかのごとくに・・・。

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2010年11月13日

イングリット・ヘブラー(1926年生まれ)  出身国:オーストリア


モーツアルト:ピアノソナタK330/K331/K333/K545

ピアノ:イングリット・ヘブラー

CD:日本グラモフォン 420 251-2

 モーツァルトのピアノソナタには名盤が数多くある。レコードの時代リリー・クラウス、ギーゼキング、CDのクララ・ハスキル、グレングールド、ピリスなどがその代表的な例である。それぞれ個性的なピアニストなので、いずれがいいかは、人それぞれの好みになろう。ただ、ヘブラーとグールドが両極端にあることだけは確かなことだ。グールドはあまりに自己中心的な解釈のため、ついていけない人も多い。それに対しヘブラーは万人の支持を得られるような名演である。ヘブラーのモーツァルトについていけない人はほとんどいない。それほど万人受けするにもかかわらず、ヘブラーがすごいのはモーツァルトの言いたいことをすべて楽譜から引き出していることだ。もし、モーツァルトがヘブラーの演奏を聴いたならば、自分が意図した以上に曲が仕上がっていることに驚くのではないか。ヘブラーのモーツァルトは天国的な音を響かせながら、一方では現代にマッチした何かが隠されている。このことがヘブラーをしてモーツァルト弾きの名手たらしめている所以であろう。

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2010年11月13日

リリー・クラウス(1903年―1986年)  出身国:ハンガリー


シューベルト:4つの即興曲op.90/142

ピアノ:リリー・クラウス

CD:キングレコード K32Y 199

 リリー・クラウスはレコード時代のモーツアルトのピアノソナタ全集でお馴染みの名ピアニストだ。音の1つ1つが表情を持ち、聴く者を引き付ける魅力を持っている。取り立てて華やかな演奏をするわけではないが、起伏の富んだ輝きを持つ軽やかなピアノタッチが特徴だ。このCDではシューベルトの4つの即興曲作品90/142を聴くことができる。録音状態が良く、現役盤でも通用しそう。このCDでもリリー・クラウスの持ち味が存分に発揮されている。程よい緊張感の中に、軽やかな旋律が流れるように弾かれていく。一見さらっとした感じがするが、単調ではなく、知らないうちに引き込まれるといった魅力を持つ。リリー・クラウス自体は第二次世界大戦で日本の捕虜になるという経験をした結果、残念ながら日本には良い感情を持ってはいなかったようだ。

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2010年11月13日

ハリーナ・チェルニー=ステファンスカ  出身国:ポーランド


ショパン:夜想曲/幻想即興曲/練習曲/ポロネーズ/バラード

ピアノ:ハリーナ・チェルニー=ステファンスカ

CD:RVC R32C?1012

 ハリーナ・チェルニー=ステファンスカはポーランド出身で、その演奏するショパンのピアノ曲は、他の追随を許さない気品というか威厳を持ったものに昇華されている。一つの細い、しかし強靭な糸の上を、あたかも宝石を転がすような繊細でしかも華やかさを込めた演奏とでも言ったらよいのであろうか、一度聴いたら忘れられない印象を聴くものに与えずにはおかない。優れた演奏技術を前面に出すのではなく、表面はあくまでもきらびやかな感覚なので、いつ聴いても耳に心地よい。決して感情を表に出すことはないのにもかかわらず、聴くものにショパンの感情を深く刻み付ける、類まれなピアニストであった。

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2010年11月13日

アルフレッド・コルトー(1877年―1962年)  出身国:スイス


ショパン:ピアノ曲集

ピアノ:アルフレッド・コルトー

CD:独EMI CZS 767359 2

 コルトーは時代を越えて、今の我々の中にもすんなり入ってこれる魔力のようなものを持っている偉大なピアニストだ。普通だと時代が変われば、その当時巨匠と言われた演奏家でも、今の我々の感覚とはだいぶ違うなとの思いにとらわれることがしばしばだ。ところがコルトーだけは、例え雨降りのSP盤の録音でも聴いていてもあまり苦にならないのは不思議だ。これがほかの演奏家であればとても耐え切れないだろう。コルトーとほかのピアニストの違いって何なんだろう。その答えの一つは、音に色彩があるということだ。聴けば聴くほどモノトーンではなくカラフルなピアノの音色がするのである。完全にショパンを自分のものにして、聴かせどころをよくつかみ、どうだといわんばかりに弾き切る。それがいやみがなく、自然体であることがすごい。これからのデジタル時代でもコルトーの録音は生き続けるであろう。

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2010年11月13日

ゲザ・アンダ(1921年―1976年)  出身国:ハンガリー


モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番/第21番

ピアノ/指揮:ゲザ・アンダ

管弦楽:ウィーン交響楽団

 ゲザ・アンダはもう30年以上も前に亡くなったピアニストにもかかわらず、その録音は今でも輝きを失わず、多くのリスナーによって愛されている。また、現在、ゲザ・アンダ国際コンクールが開催されており、その名は過去のものにはなっていない。このような例は意外に少ないことに気付かされる。それと、映画「みじかくも美しく燃え」のサウンドトラックに、ゲザ・アンダとモーツァルテウム・カメラータ・ザルツブルグとによるモーツアルトのピアノ協奏曲第21番が使われたことも、ゲザ・アンダの名前を一層ポピュラーなものにしているのではなかろうか。このCDはゲザ・アンダがこの世を去る3年前に録音されたものだ。最晩年に録音されたためか、内容の深い名演となっており、ウィーン交響楽団のいつも以上の熱演振りも聴いていて心地いい。

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