クラシック音楽 日本の歌


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2013年1月30日

♪ 日本の童謡、唱歌、抒情歌を網羅(71曲)した「唱歌・童謡ものがたり」(読売新聞文化部編/岩波書店刊)の重版を望む


 以前、クラシック音楽の小品を網羅した「クラシック 珠玉の小品500 心地よい曲・懐かしい曲・知られざる曲<改訂増補版>」(宮本英世著/DU BOOKS発行/ディスクユニオン発売)を紹介したことがあるが、この本には日本の曲が含まれていないので、今回は、日本の童謡、唱歌、それに抒情歌を網羅した本を紹介しようと思う。それは「唱歌・童謡ものがたり」(読売新聞文化部編/岩波書店刊)である。ここには全部で71曲について、それぞれの曲の作詞、作曲の由来が、読売新聞社の18人の記者たちの筆で紹介されている。しかし、残念なことに岩波書店のホームページで検索すると「品切重版未定 1999年8月25日発行」と記載されている。つまり、「絶版ではないが、今のところ重版がいつになるかは未定」ということらしい。では、入手は不可能かというとそうでもない。アマゾンなどのインターネットの通販サイトでは、中古本として購入が可能なようである。岩波書店には、是非、今後重版をお願いしたいものである。

 さて、この「唱歌・童謡ものがたり」は、読売新聞社が、親から子へ伝えられてきた名曲の生まれた背景や作詞家・作曲家についての紹介をしようと、1996年(平成8年)6月2日付の読売新聞日曜版からスタートした「うた物語―唱歌・童謡」の連載記事を基に単行本として発刊したもの。71曲は、「春よ来い」(18曲)、「夏の思い出」(19曲)、「秋の里」(22曲)、そして「冬の星座」(12曲)の春夏秋冬を表す4つの章に分けられ、それぞれの曲が物語風に紹介されている。

 例えば、「夏の思い出」(作詞:江間章子、作曲:中田喜直)を見てみると・・・。「終戦を迎えるが日本人のすべてが食うや食わずの生活。そんなときNHKが始めたのが『ラジオ歌謡』だった。国民に親しみやすい曲をラジオで紹介する企画。江間も作家人の一人に選ばれた。・・・謝礼は1曲30円。『私にとって、生きるためにはどうしても必要なお金だった』」。一方、作曲者の中田喜直はというと、「中古ピアノの前に座るとスラスラと曲想がわいた。ところが、『出来た、出来た』と喜んでいるのをそばで聞いた母親のこうさんがピシリと言ったのだ。『ちょっとお粗末なんじゃないの?』」。その声に中田喜直は発奮し、元の旋律を大幅に変更して完成させたのが名曲「夏の思い出」だったのだ。もし母親の一喝がなかったら、今の「夏の思い出」は生まれていなかったかもしれない。名曲「夏の思い出」にはこんな誕生秘話があったとは知らなかった。でも、これを読み、当時の日本人のつつましい生活を思い出し、「夏の思い出」が一層身近な曲となったのも事実だ。

 最近、発刊された日本の童謡、唱歌、抒情歌についての本にも優れたものがある。その一冊が「唱歌・童謡で学ぶ 伝え続けたい日本のこころ」(二宮 清、李 広宏著/五月書房刊)である。ここには、「日本のこころの歌」として16曲が紹介されている他に、「いまなぜ、唱歌・童謡か?」として、唱歌・童謡を歌い伝えるための基本的な心構えが、さらに「我国の歌の歴史」として、唱歌・童謡の生い立ちと普及と発展が述べられている。つまり、同書には、日本の童謡、唱歌、抒情歌を理論的に分析し、今後さらに継承するための指針が示されているのである。この本は、二宮 清と李 広宏の2人の著者の日本の童謡、唱歌に対する熱い思いが結晶したものだ。二宮 清は、ダイキン工業の技術者(工学博士)としての一方、趣味として、唱歌・童謡の歌碑、曲碑などの建立されているゆかりの地を訪ね、それぞれの歌の誕生の経緯を学んでいる。1961年、中国蘇州生まれの李 広宏は、1987年に来日。留学生として学ぶ傍ら、日本の童謡、抒情歌を自ら中国語に翻訳し歌い続ける音楽活動を続ける。この本には、李 広宏が日本語と中国語で歌う「李 広宏が歌う唱歌・童謡」のCDが付録として付けられている。

 CDの話が出たので、日本の童謡を英語で歌う、“童謡の伝道師”クレッグ・アーウィンに触れないわけにはいかなくなった。クレッグ・アーウィンは、アメリカの出身の東京在住のシンガーソングライター。ウィスコンシン大学、ミネソタ大学、ハワイ大学で学び、日本の童謡・唱歌を自らの視点で英訳し、現在ではその数100曲を超えるという。現在、日本各地でコンサート・公演等を行う他、テレビ、ラジオ、司会等を行い、“童謡の伝道”をライフワークとしている類まれな人物。これまで数多くのCDをリリースしているほか、著書としては、全13タイトル26曲のCDが付いた「グレッグ・アーウィンの英語で歌う、日本の童謡」などがある。(蔵 志津久)

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