2010年11月13日
ハリーナ・チェルニー=ステファンスカ 出身国:ポーランド
ショパン:夜想曲/幻想即興曲/練習曲/ポロネーズ/バラード
ピアノ:ハリーナ・チェルニー=ステファンスカ
CD:RVC R32C?1012
ハリーナ・チェルニー=ステファンスカはポーランド出身で、その演奏するショパンのピアノ曲は、他の追随を許さない気品というか威厳を持ったものに昇華されている。一つの細い、しかし強靭な糸の上を、あたかも宝石を転がすような繊細でしかも華やかさを込めた演奏とでも言ったらよいのであろうか、一度聴いたら忘れられない印象を聴くものに与えずにはおかない。優れた演奏技術を前面に出すのではなく、表面はあくまでもきらびやかな感覚なので、いつ聴いても耳に心地よい。決して感情を表に出すことはないのにもかかわらず、聴くものにショパンの感情を深く刻み付ける、類まれなピアニストであった。
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2010年11月13日
アルフレッド・コルトー(1877年―1962年) 出身国:スイス
ショパン:ピアノ曲集
ピアノ:アルフレッド・コルトー
CD:独EMI CZS 767359 2
コルトーは時代を越えて、今の我々の中にもすんなり入ってこれる魔力のようなものを持っている偉大なピアニストだ。普通だと時代が変われば、その当時巨匠と言われた演奏家でも、今の我々の感覚とはだいぶ違うなとの思いにとらわれることがしばしばだ。ところがコルトーだけは、例え雨降りのSP盤の録音でも聴いていてもあまり苦にならないのは不思議だ。これがほかの演奏家であればとても耐え切れないだろう。コルトーとほかのピアニストの違いって何なんだろう。その答えの一つは、音に色彩があるということだ。聴けば聴くほどモノトーンではなくカラフルなピアノの音色がするのである。完全にショパンを自分のものにして、聴かせどころをよくつかみ、どうだといわんばかりに弾き切る。それがいやみがなく、自然体であることがすごい。これからのデジタル時代でもコルトーの録音は生き続けるであろう。
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2010年11月13日
ゲザ・アンダ(1921年―1976年) 出身国:ハンガリー
モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番/第21番
ピアノ/指揮:ゲザ・アンダ
管弦楽:ウィーン交響楽団
ゲザ・アンダはもう30年以上も前に亡くなったピアニストにもかかわらず、その録音は今でも輝きを失わず、多くのリスナーによって愛されている。また、現在、ゲザ・アンダ国際コンクールが開催されており、その名は過去のものにはなっていない。このような例は意外に少ないことに気付かされる。それと、映画「みじかくも美しく燃え」のサウンドトラックに、ゲザ・アンダとモーツァルテウム・カメラータ・ザルツブルグとによるモーツアルトのピアノ協奏曲第21番が使われたことも、ゲザ・アンダの名前を一層ポピュラーなものにしているのではなかろうか。このCDはゲザ・アンダがこの世を去る3年前に録音されたものだ。最晩年に録音されたためか、内容の深い名演となっており、ウィーン交響楽団のいつも以上の熱演振りも聴いていて心地いい。
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2010年11月13日
マリア・ジョアオ・ピリス(1944生まれ) 出身国:ポルトガル
モーツアルト:ピアノソナタ全曲
ピアノ:マリア・ジョアオ・ピリス
CD:日本ポリドール POCG 1480/5
モーツアルトのピアノソナタ全集はリリー・クラウス、ワルター・ギーゼキング、グレングールド、イングリッド・ヘブラーなど、過去から多くの名盤に恵まれている。言わばショパン、ベートーベンと並びピアニストの登竜門的位置づけとなっている。これらの中でマリア・ジョアオ・ピリスのモーツアルト/ピアノソナタ全集は、十分にその存在意義持ち、さらに透明感ある音色、ゆったりとしたテンポ、そして何よりも説得力ある語り口、どれもとっても一級品であることは間違いない。特に名盤が多い中でピリスの最大の特徴は、現代人として最も共感できるモーツァルトに仕上がっていることであろう。クラウスやギーゼキングのように大時代がかっておらず、また、グールドのようなモダニズムとも違う。我々が日常過ごしている空間に入り込んでもなんら違和感を感じないモーツァルトとなっている。
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2010年11月13日
クララ・ハスキル(1895年―1960年) 出身国:ルーマニア
モーツアルト:ピアノ協奏曲第20番/第13番
ピアノ:クララ・ハスキル
演奏:フェレンツ・フリッチャイ指揮/リアス交響楽団
ルドルフ・パウムガルトナー指揮/ルツェルン・フェスティバル管弦楽団
CD:独グラモフォン 437 676-2
クララ・ハスキルはモーツアルトを弾くために生まれてきたようなピアニストである。よく“天上の音楽”といったようなことが言われるが、このCDのクララ・ハスキルを聴くと、正に“天上の音楽”そのものといったことを思い浮かべてしまう。陰影のある、それでいてあまり深刻ぶらない弾きかたとでもいえようか。油絵の世界というより水彩画の世界により近い感じがする。いつの間にか、現実にはありえないような、空想の世界へと聴衆を導いてしまう、稀有ななピアニストであった。フリッチャイ、パウムガルトナーの両指揮者も、ハスキルの特徴を最大限に引き出している。
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2010年11月13日
エミール・ギレリス(1916年―1985年) 出身国:ロシア
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番/ピアノソナタ
ピアノ:エミール・ギレリス
指揮:エフゲニー・ムラビンスキー
管弦楽:レニングラード・フィルハモニー管弦楽団
CD:Russian Disc RD CD 11 170
このCDは1971年3月にモスクアで行われた実況録音盤である。ギレリスのピアノは情緒に流されることなく、ピンと筋が通った演奏である。同時に柔らかな雰囲気も十分に醸し出すことができ、やはり超一流のピアニストであったことを裏付けるCDとなっている。録音は最近のCDと比べると聴き劣りはするが、30年以上前のライブ録音にしては良く録れている。ムラビンスキーの指揮はいつもと変わらず威風堂々としている。このCDのギレリス、ムラビンスキー、レニングラードフィルの3者の演奏は、旧ソ連最高の組み合わせといってもいいであろう。
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2010年11月13日
田中希代子(1932年―1996年) 出身国:日本
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番
ショパン:ピアノ協奏曲第1番
モーツアルト:ピアノソナタ第11番 他
ピアノ:田中希代子
CD:キングレコード KICC576
田中希代子は、1952年(昭和27年)にジュネーヴ国際コンクールで最高位受賞(イングリット・ヘブラーと1位なしの2位を分け合う)、翌1952年(昭和28年)ロン=ティボー国際コンクールで4位入賞、さらに1955年(昭和30年)にはショパン国際コンクールで10位入賞を果たした。つまり、日本人が国際コンクールへ参加すること自体が珍しかった時代に、4年間で3つの国際コンクールに入賞するという離れ業をやってのけたのである。このCD2枚には、ショパン国際コンクールでのライヴ録音によるショパンのピアノ協奏曲、NHK定期演奏会でのベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番のライブ録音、さらにキングレコード・スタジオにおけるモーツァルトのピアノソナタ第11番などが収められている。ベートーヴェンのピアノ協奏曲を聴くとその凛とした演奏姿勢には脱帽させられる。今こんな毅然としたベートヴェンを弾けるピアニストはいるのか。モーツァルトのピアノソナタを聴くと鮮やかなテクニックを見事に聴くことができる。こんなに流れるように正確で、しかも情感を持った演奏はめったに聴けるものではない。
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2010年11月13日
ウィルヘルム・ケンプ(1895年―1991年) 出身国:ドイツ
ベートーヴェン:ピアノソナタ第8番「悲愴」
ピアノソナタ第14番「月光」
ピアノソナタ第15番「田園」
ピアノソナタ第24番「テレーゼ」
ピアノ:ウィルヘルム・ケンプ
CD:エコー・インダストリー CC‐1005
ウィルヘルム・ケンプ(1895年―1991年)は、私が最も尊敬するピアニストだ。実に誠実にピアノにたち向かい、少しも奇をてらうところがなく、淡々と弾きこなす。そして、とても内容の深い、その精神性が聴くものを圧倒する。ドイツのピアノ演奏の伝統を身に付けた演奏スタイルは、実に堂々としていて、一瞬の隙も見せない。だからといって、コチコチで堅苦しいといった印象は薄いのだ。むしろ人間味のある、まろやかな音質はとても親しみやすいし、聴いていて疲れることはない。何よりも、音質的には澄んだピュアな響きが何とも印象的で、安定感もある。聴いていて、これこそドイツのピアノ演奏の真髄だという感じがするのだ。今、ケンプのような温かみのあるピアノを弾くピアニストは、ほんとに少なくなってしまった。
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2010年11月13日
クラウディオ・アラウ(1903年―1991年) 出身国:チリ
ベートーヴェン:ピアノソナタ全集
ピアノ:クラウディオ・アラウ
CD:PHILIPS 426 761?2
クラウディオ・アラウは安定した技量に加え中道を行く姿勢が、聴く者に安心感と何かやすらぎを与えるところがいい。この特徴が最大限に発揮しているのがベートーヴェンのピアノソナタ全集であろう。堂々とした弾きっぷりに惚れ惚れしてしまうのと同時に、これこそ本来のベートーヴェンだと誰をも納得させてしまいそうなところがすごい。誇張とかもったいぶることもない、実に淡々とした演奏だ。私はこのような特徴は好ましいものに感じられるが、何か物足りなさを感じる人もいるであろう。でも、エクセントリックなベートーヴェンより、クラウディオ・アラウの弾く正攻法のベートーヴェンの方が、好ましいと感じる人の方が多いと思う。
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2010年11月13日
マルグリット・ロン(1874年―1966年) 出身国:フランス
フォーレ:ピアノ四重奏曲第1番/第2番
ピアノ:マルグリット・ロン
パスキエ弦楽三重奏団(第1番)/ジャック・ティボー(バイオリン)、モーリス・ヴィュー(ビオラ)、ピエール・フルニエ(チェロ)(第2番)
CD:東芝EMI CE30 5408
LP盤はレコード針が擦り切れるほど聴いてきたが、これは“世紀の巨匠たち”と銘打たれたCDのシリーズものの歴史的名盤の1枚。このCDの存在意義はピアノがマルグリット・ロン というところにある。その優雅でいて芯の一本通ったようなピアノ演奏は他の追随を許さない魅力に溢れている。第1番はパスキエ三重奏団との共演で、ピアノと弦楽器の渾然一体となった響きが素晴らしい。音も第2番に比べ聴きやすく、十分に鑑賞に耐えられるレベルだ。第2番は演奏者の個人技の発揮のし合いといった趣がある。特にティボーとロンの互いにキャッチボールを楽しむかのような演奏は、さすが名人技として聴き惚れてしまう。“ロン=ティボーコンクール”の名で有名な二人だが、互いにの演奏そのものを認め合っていたことを理解できるのが、このCDだということができる。
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