クラシック音楽 日本の歌


バックナンバー 2015年 4月

2015年4月29日

♪ 書籍:「ふるさとの歌がきこえる」(全曲CD付き)


書名:ふるさとの歌がきこえる~歌いたい、伝えたい・・・「50~70代が選んだベスト50曲(CD付き)」~

【春】どこかで春が/春よ来い/早春賦/春の小川/めだかの学校/うれしいひなまつり/春がきた花/さくら/仰げば尊し/朧月夜/みかんの花咲く丘/鯉のぼり/背くらべ/荒城の月

【夏】シャボン玉/故郷/夏は来ぬ/茶摘/汽車/たなばたさま/浜辺の歌/我は海の子/椰子の      実/海/通りゃんせ /この道/五木の子守唄/夏の思い出/夕焼小焼

【秋】ずいずいずっころばし/箱根八里/赤い靴/青い眼の人形/赤蜻蛉/ちいさい秋みつけた/      里の秋/紅葉/あんたがた何処さ/旅愁

【冬】七つの子/たきび/かあさんの歌/砂山/ふじの山/お正月/雪/ペチカ/冬の星座/蛍の光

写真:吉野晴朗

音楽:山崎幸次

企画:三芳伸吾

発行:パイ インターナショナル

                                     ◇

 
 日本の歌は、情感で聴くことができると同時に、懐かしい故郷の情景が目に浮かび、誰の心も癒される。それらは、あまりに身近な曲なため、改めて「曲名を挙げてごらん」と言われると、10曲ぐらいはすらすらと出るかもしれないが、意外に何十曲も言えないものだ。

 そんな時、座右に置いておくと便利なのが、この本「ふるさとの歌がきこえる」(発行:パイ インターナショナル)である。

 これは「春の小川」「浜辺の歌」「小さい秋見つけた」「たきび」・・・など、50~70歳の人々のアンケートから厳選された、50曲の代表的な日本の歌が載っている。

 ページをめくりながら、こんな曲もあったな、あんな曲もあったなと思い出すことができる。一曲づつの歌詞が全文掲載されているうえ、それらの曲の簡単な成り立ちの解説文も添えられている。

 そして何よりも素晴らしいのが、その曲に相応しい美しい写真が1ページを使って大きく掲載されていること。例えば、「仰げば尊し」の曲ページには、小学校の校庭にぽつんと立つぶらんこの上に、桜の花が咲きそろった写真が掲載されている。

 何気ない風景を写した写真なのだが、日本の原風景を見ているようであり、誰の心にも懐かしさが込み上げてくることであろう。それに加え、50曲すべてを収録したオリジナル制作のCDが付いているのも嬉しい。

 懐かしい故郷の風景が毎年毎年壊されていくなか、この本の中だけには、50曲の日本の歌とともに、美しい日本の原風景がくっきりと残されている。(蔵 志津久)

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2015年4月26日

♪ 服部克久氏の選んだ「戦後を代表する10の楽曲」とは?  


 作曲家・編曲家の服部克久氏の講演会「戦後70年の記憶『戦後70年 音楽の記憶をたどる~あの時、この曲が選ばれた~』」(主催:朝日カルチャーセンター新宿教室)が7月4日に行われるというので、受講することにした。受講理由の一つは、案内書に「服部克久さんが、戦後を代表する10の楽曲を選びます」と書かれていたことに大いに心が引かれたからだ。安保法案などの“行く末”はともかくとして、戦後70年という区切りで、いったん立ち止まり、“来しかた”を振り返るのも、また意味があるのに違いあるまいと考えた。

まず、服部克久氏の略歴を見てみよう。1936年、作曲家の服部良一の長男として生まれ、成蹊高等学校を経てパリ国立高等音楽院へ留学。和声、フーガ、対位法を学んだ後、1958年卒業。帰国後すぐ、作曲活動に入る。1971年には、「花のメルヘン」で第13回日本レコード大賞編曲賞を受賞。その後、日本レコード大賞企画賞を2回(第32回:1990年、第40回:1998年)受賞している。現在までの作編曲タイトル数は、約6千曲、編曲スコア数7万曲を超えるという。現在の主な役職は、日本作編曲家協会会長、東京音楽大学客員教授。

さて、服部克久氏が選んだ、「戦後を代表する10の楽曲」とは?

               ①りんごの歌           (並木路子)
               ②東京ブギウギ         (笠置シヅ子)
               ③青い山脈            (藤山一郎/奈良光枝)
               ④有楽町で逢いましょう    (フランク永井)
               ⑤上を向いて歩こう       (坂本 九)
               ⑥悲しい酒            (美空ひばり)
               ⑦この広い野原いっぱい    (森山良子)
               ⑧卒業写真            (荒井由実)
               ⑨昴                (谷村新司)
               ⑩恋するフォーチュンクッキー (AKB48)

以上の10曲である。予想通りであったろうか。

当日の受講生は、ほぼ服部克久氏と同世代が多かったので、次のような質問が飛び出した。

<質問>「最近の若者の歌は分からない。服部先生はどう思うか」

<答え>「昔の歌は音声だけだったわけだが、最近の歌は、踊りや照明など音声以外の要素を取り込んでいる。総合的な観点からとらえねばならない。どちらがいいとか、悪いという話とは異なる。ただ、昔は作詞・作曲者が表面に出たが、最近は表面になかなか表れないのは残念」

<質問>「最近の曲は軽薄では」

<答え>「昔も、チャッチャッチャッやマンボなんていうのもあった。あまり変わらない」

<質問>「日本の歌が世界に広がる可能性はあるのか」

<答え>「残念ながら言語の問題があり、日本の歌が世界に広がることは、なかなか難しいと思う。それだからこそ、我々が日本の歌をもっと大切にする必要性がある」

<質問>「最近『フォレスタ』などのような合唱が流行っているが、服部先生の意見は」

<答え>「『フォレスタ』などがテレビで歌っているのを聴く。合唱は体が楽器であり、歌を表現するのに最も適している。合唱が流行ってくれることを期待する」

服部克久氏の話は明快で、親しみ易く、好感が持てた。「美空ひばりはとても心の優しい人だった」など、昔の歌手の話がたくさん盛り込まれた楽しい講演会であった。最後には服部克久氏のピアノのソロ演奏のサービスもあった。是非続編を望む。(蔵 志津久)

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