クラシック音楽 音楽の泉


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2013年1月13日

♪ ありそうでない、小品の名曲を網羅した「クラシック 珠玉の小品500」(宮本英世著)が発売された


 クラシック音楽を長らく聴き続けていると、つい深淵で長大な曲を追い求めることになってくる。モーツァルトの交響曲を聴き、その良さに触れると、次はベートーヴェンだ、ブラームスだとなり、ブルックナー、マーラーに行きつく。これはこれで一つのものを追い、極めるという、趣味の王道とも言えるもので、ある意味では至極まっとうなことである。一方で、これでは、あまりにも専門的になり過ぎ、音楽が本来持つ、大衆性とか、日常生活の活性化などのシンプルな意味合いが薄れることに繋がりかねない。

 私自身、クラシック音楽を聴く切っ掛けとなったのは、ヴォルフ=フェラーリの歌劇「聖母の宝石」第1間奏曲とか、ベートーヴェンの「ロマンス第1番/第2番」とか、マスネーの「タイスの瞑想曲」とか、グリーグの「ソルヴェーグの歌」などの小品の名曲であった。その当時に、ブルックナーとかマーラーの交響曲を聴いても、交響曲が鳴ってるなぐらいしか認識できなかったし、とても全曲を聴き通すことなどは考えられなかった。だからと言って、ブルックナーやマーラーを聴く、今と比べて、クラシック音楽リスナーライフが貧弱であったかというと、そうとも言えない。これらの小品の名曲には、大曲に少しも劣らない魅力を秘めた曲も数多くあるからだ。

 そんなわけで、初心に帰りたいと思い、小品の名曲を網羅した本を探したのであるが、意外にありそうでないのである。クラシック音楽の入門者向けの本に、いくつかの小品の名曲を紹介したものはあるのだが、「網羅」したものと言うと、これがないのである。もう諦めかけていた時、「クラシック 珠玉の小品500 心地よい曲・懐かしい曲・知られざる曲<改訂増補版>」(宮本英世著/DU BOOKS発行/ディスクユニオン発売)が発売されるという広告が目に入った。早速購入し、今私の机の端に置いてある。そして時間のある時に1曲、1曲の解説を読み、「そうだ、昔はこんな曲に夢中になってたな」と昔を思い出すと同時に、「こんな小品にも、こんな隠された逸話があったのか」と小品の魅力を再認識し、楽しんでいるところである。

 筆者の宮本英世氏は、音楽関係の会社を経て、現在は、名曲喫茶ショパン(東京都豊島区高松2-3-4)の店主を務めている。宮本さんの著作は、同じ出版社から発刊された「クラシック深夜便 眠れぬ夜の音楽入門」を読んでいたので、内容には信用が置けた。この「クラシック深夜便」も面白い本で、ともすると専門的になりがちなクラシック音楽を、人生という観点から見つめ直した内容。どいうわけか、このようなクラシック音楽の本は現在ではあまり見かけなくなったので、面白く読めた。

 この「クラシック 珠玉の小品500」の方は、500曲の小品の名曲を1曲約1ページ使い解説した内容。全体が、第1章名曲世界の旅情~第21章大曲中の聴きどころ、まで21のテーマに分けられ紹介されているので読み物として読みやすく、また巻末にはアイウエオ順の曲名索引が付けられているので、辞書機能も備えている。この本をマスターすれば、あなたも必ずやクラシック音楽の小品についての薀蓄を語れるようになることでしょう。(蔵 志津久)

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