クラシック音楽 音楽の泉


バックナンバー 2016年 5月

2016年5月25日

☆神奈川フィルと名古屋フィルの二つのオーケストラ総勢134人によって蘇るショスタコーヴィチ:交響曲第7番「レニングラード」


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 神奈川フィルハーモニー管弦楽団と名古屋フィルハーモニー交響楽団の二つのオーケストラの総勢134人による演奏会が、6月24日(土)、神奈川フィル常任指揮者であり、今注目の川瀬賢太郎の指揮で、ショスタコーヴィチ:交響曲第7番「レニングラード」などが演奏される。「レニングラード」は、ショスタコーヴィチが3か月の間に80万人が犠牲者となったといわれる“レニングラード攻防戦”のさなかに書かれた交響曲で、今回のような大編成のオーケストラによって演奏されると、その効果は倍増され、今から各方面の注目を集めている。

 ショスタコーヴィチ:交響曲第7番は、第二次世界大戦のさなか、ナチス・ドイツ軍に包囲(レニングラード包囲戦)されたレニングラード(現在のサンクトペテルブルク)市内で作曲された。ショスタコーヴィチは、「プラウダ」紙上に「私は自分の第七交響曲を我々のファシズムに対する戦いと我々の宿命的勝利、そして我が故郷レニングラードに捧げる」と書いたことから「レニングラード」という通称が付けられている。現在、ショスタコーヴィチはこの作品において、ナチス・ドイツのみならずソ連政府の暴力をも告発しているのだ、という説が有力になりつつある。そのため、最近では再評価の動きが高まりつつある。

 今回、二つのオーケストラの総勢134人の大編成のオーケストラにより「レニングラード」が演奏されることによって、“レニングラード攻防戦”の最中にあって作曲した、ショスタコーヴィチが真に訴えたかったことが、鮮明に再現されることが予想される。ちなみに当日のオーケストラの楽器編成は次の通り。ピッコロ1、フルート2(アルトフルート1)、オーボエ2、イングリッシュホルン1、クラリネット2、Es(高音)クラリネット1、バスクラリネット1、ファゴット2、コントラファゴット1、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバ1、(第2グループまたはバンダ)ホルン4、ティンパニー、トライアングル、タンブリン、小太鼓、シンバル、大太鼓、タムタム、シロフォン(木琴)、ハープ2、ピアノ、弦楽5部。

 指揮の川瀬賢太郎(1984年生まれ)は、東京都出身。2006年、若手指揮者の登竜門として知られる「東京国際音楽コンクール」で1位なしの2位(最高位)に入賞し、一躍注目を浴びる。2007年、東京音楽大学音楽学部音楽学科作曲指揮専攻(指揮)を卒業。各地のオーケストラより招きを受け、2008年と2011年にイル・ド・フランス国立オーケストラと共演するなど、海外での活動も数多い。現在、名古屋フィルハーモニー交響楽団指揮者、神奈川フィルハーモニー管弦楽団常任指揮者などを務めている。現在、名古屋フィルハーモニー交響楽団指揮者、2014年より神奈川フィルハーモニー管弦楽団常任指揮者に就任。2015年細川俊夫作曲オペラ「リアの物語」を広島にて指揮、喝采を浴びるなど、細川俊夫の作品の指揮者としても知られる。2015年「渡邉暁雄音楽基金」音楽賞、第64回神奈川文化賞未来賞、2016年第14回齋藤秀雄メモリアル基金賞を受賞。さらに2016年第26回出光音楽賞を受賞した。(蔵 志津久)

【特別演奏会 名古屋フィル+神奈川フィル スペシャル・ジョイント・コンサート】

モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番
ショスタコーヴィチ:交響曲第7番「レニングラード」

ピアノ:菊池洋子

指揮:川瀬賢太郎(神奈川フィル常任指揮者)

管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団+名古屋フィルハーモニー交響楽団

会場:横浜みなとみらいホール

日時:2016年6月25日(土曜日)  午後2時

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2016年5月11日

☆日本人として初めてグラミー賞にノミネートされた冨田勲が遺した一枚のLPレコード 


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 作曲家でシンセサイザー奏者の冨田 勲が5月5日に亡くなった。

 冨田 勲は、慶應義塾大学文学部在学中に作曲家として活動を始め、NHKや民放の音楽を担当した。初期のころには、作曲家として活動する一方、新たに出現してきた電子機器と古典的な楽器とを融合させるなど、様々な音楽の可能性を追求し始めた。

 1969年にシンセサイザーと出会ったことが、冨田 勲のその後の音楽活動を大きく変えるこにとなる。つまり、シンセサイザーを使い、古典的名曲を現代的な解釈を付け加えて発表するという活動が中心となって行くわけである。

 この結果、1974年には「月の光 – ドビッシーによるメルヘンの世界」が、日本人として初めてグラミー賞にノミネートされると同時に、全米レコード販売者協会の1974年最優秀クラシカル・レコードにも選ばれた。さらに、次作の「展覧会の絵」はビルボード・キャッシュボックスの全米クラシックチャートの第1位を獲得し、1975年全米レコード販売者協会の最優秀レコードを2年連続受賞することになる。

 さらに、1975年度の日本レコード大賞・企画賞を受賞。次作の「火の鳥」はビルボード全米クラシックチャート第5位、さらにその次作の「惑星」もビルボード全米クラシック部門で第1位にランキングされた。

 「バミューダ・トライアングル」では、発売翌年のグラミー賞で 2回目、1983年のアルバム「大峡谷」では3回目のグラミー賞のノミネートを受けた。以降「バッハ・ファンタジー」(1996年)まで、冨田 勳のアルバムはいずれも世界的なヒットを記録し、「イサオ・トミタ」は世界的名声を得ることになる。

 ここに冨田 勲の一枚のLPレコード「VOYAGE(ヴォヤージュ:航海)」がある。これは、ファースト・アルバム「月の光」に始まり、「展覧会の絵」「火の鳥」「惑星」「宇宙幻想」」「バーミューダ・トライアングル」「ダフニスとクロエ」と立て続けに世界的規模でのグレイテスト・ヒットを放ってきた冨田 勲の偉大な軌跡を鳥瞰するために特に編まれたアルバムなのだ。

 それまでのアルバムから収録してあるLPレコードなのではあるが、単なる曲の寄せ集めではなく、一つの物語を構成してある。それが「VOYAGE(ヴォヤージュ:航海)」という意味なのだ。出発点は、我らの母なる地球であり、行先は宇宙の彼方からメルヘンの世界にまで及ぶ、壮大極まりない規模のコースである。       合掌 (蔵 志津久)    

【A面】

1.出発(冨田)
2.ソラリスの海(バッハ~冨田)⑤
3.パシフィック231(オネゲル)⑤
4.亜麻色の髪の乙女(ドビュッシー)①
5.バーバ・ヤーガの小屋(ムソルギスキー:「展覧会の絵」より)②
6.卵のからをつけたヒナの踊り(ムソルギスキー:「展覧会の絵」より)②
7.シベリアのツングースに激突したことのあるまばゆく光る円筒形の物体(プロコフィエフ:交響曲第6番第1楽章~冨田)
8.答えのない質問(アイヴス)⑤

【B面】

1.夢(ドビュッシー)①
2.パスピエ(ドビュッシー)①
3.沈める寺(ドビュッシー)①
4.ボレロ(ラヴェル)⑦
5.フィナーレ(ストラヴィンスキー:「火の鳥」より)③
6.シンコペーテッド・オクロック(アンダーソン~梅垣~冨田)

<収録アルバム名>

①「月の光」
②「展覧会の絵」
③「火の鳥」
④「惑星」
⑤「宇宙幻想」
⑥「バーミューダ・トライアングル」
⑦「ダフニスとクロエ」

シンセサイザー:冨田 勲

LP:RVC RCL―8044

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