2018年1月15日
↑ シューマンの「ツヴィッカウ交響曲」を収録したCDも発売されているが、演奏会が開催されるのはまれ ↑
今年の6月に、通常の演奏会では滅多に取り上げられないシューマンの幻のシンフォニー「ツヴィッカウ交響曲」(未完成交響曲)の演奏会が開催される。
シューマンの交響曲と言えば、第1番「春」、第2番、第3番「ライン」、第4番の4曲が広く知られており、いずれの曲も演奏会でしばしば取り上げられ、交響曲の人気シリーズの一つとなっている。この4曲以外にシューマンに交響曲があったと言われても、「?」と思われる人がほとんどだと思う。「ツヴィッカウ交響曲」の名称自体が厳めしく、何か事情があって陽の目を見ないことになったのかな、と考え込んでしまう。実は、ツヴィッカウとは、シューマンが生まれた地名であるとともに、この曲の初演が行われた地名でもあるのだ。
シューマンが、初めて交響曲を作曲したのが、この曲であるとされている。第2楽章までを完成させながら、遂に全曲を完成しなかった交響曲なのである。シューマンは、1832年にこの曲の作曲を開始し、第1楽章のみを完成(ちなみに交響曲第1番「春」は1841年に作曲)。同年、ツヴィッカウにおいて、この第1楽章が初演されたが、全く評価されなかった。その後、翌年にかけて、第1楽章の改定と、第2楽章の作曲が行われた。シューマン自身は3楽章構成でこの交響曲を完成させる構想を持っていたと言われるが、それ以後の作曲は行われず、未完成のままで終わってしまった。
現在、この「ツヴィッカウ交響曲」が演奏会で取り上げられることはまずない。ところが年6月23日にサントリーホールで行われる東京交響楽団の第661回定期演奏会で突如として取り上げられることになった。現在、CDでこの交響曲を聴くことができる。聴いてみると、確かに曲としての完成度は、イマイチという感は免れないが、さりとて全く無視してもいい曲かといわれれば、そうでもない。
若き日のシューマンの交響曲への思い入れが伝わってきて、これはこれなりに、完結した世界を持った曲ということができると思う。演奏会で生の演奏を聴くとCDとはまた違う印象が得られるかもしれない。何しろ、この後に、「ツヴィッカウ交響曲」の演奏会が再び行われるという保証はどこにもないのだから、この演奏会は貴重な体験となるであろう。(蔵 志津久)
◇
<東京交響楽団第661回定期演奏会>
クララ・シューマン(ユリウス・オット・グリム編):行進曲 変ホ長調
シューマン:交響曲 ト短調 「ツヴィッカウ」(未完成交響曲)
ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 Op.15
指揮:秋山和慶
管弦楽:東京交響楽団
ピアノ:マルカンドレ・アムラン
会場:サントリーホール
日時:2018年6月23日(土) 午後6時