クラシック音楽 音楽の泉


2010年11月12日

♪ NHKテレビ「クラシックドキュメンタリー ヘルベルト・フォン・カラヤン」を見て感じたこと ♪

 2010年7月13日の午後8時から9時35分の1時間35分にわたって、NHKハイビジョンテレビで「クラシックドキュメンタリー ヘルベルト・フォン・カラヤン」が放送された。これは、20世紀でおそらく最も有名だった指揮者のヘルベルト・フォン・カラヤンの音楽家としての歩みや芸術への姿勢などを、カラヤンを知るたくさんの人々の証言でたどったもの。カラヤン自身のインタビューや、私生活の映像も数多く盛り込まれているところが見どころだ。製作はUnitel/MRFilm(ドイツ/オーストリア 2007年)。

 このテレビ放送は、前半と後半のカラヤンの人間性が大きく変化を遂げたことを、意識的にか、あるいは事実に即してかは判然としないが、とにかく別人の如く変貌を遂げたことを数々の証言が明らかにしていた。

 若い頃、オーケストラのコンサートマスターをカラヤンが首にし、これに怒ったコンマスは、実際に拳銃を懐に、カラヤンを撃とうとし、寸前のところで取り押さえられたことも証言されていた。また、「あんな神経質な指揮者はきらいだ」と皆が言っていたという証言も飛び出す。ナチ党員であったことに触れるのかどうか興味深かったが、本人がさらリ認め、「どうってことないよ」とかわしていた。専属指揮者に就任当日に党員になったことが本人の口から証言されていた。カラヤンとしては、指揮者就任の挨拶程度ということを言いたかったようであるが、見方を変えれば、指揮者就任の条件であったかもしれないのだ。

 後半は“人間味溢れるカラヤン”が描かれる。ジェット機の操縦を自らし、ムターなどを喜ばせ、ヨットを自ら操り家族サービスをするなど、日常のカラヤンの生活が紹介される。ただ、鋭い眼光だけはどんな時も同じなのは、可笑しいといえば可笑しい。普通の人なら、目つきも温和になるはずなのに・・・。「彼は何時も真面目」という証言があったが、仕事も遊びもいつも真面目に取り組んでいたということだろう。

 オペラの映像がかなり映されたが、びっくりするのは指揮台で指揮をするのではなく、自ら演出家となって、歌手に振り付けの指導をすること。あれでは演出家の出番がなくなるだろうに。ウィーンフィルとのゲネプロでは、ジョークを飛ばし盛んに楽団員の笑いを誘っていた。若いころの“無口で神経質な指揮者”の姿はもうそこにはない。

 カラヤンほど、その一挙手一投足が注目された指揮者はいなかった。しかし、そこには支持者と同数の非支持者もいたことはいた。ただ、「カラヤンが来るといつでもその回りはとてつもない緊張感に包まれ、そして、指揮をしているときの姿から発する見えない力に皆金縛りになった」という証言は、カラヤンが如何に図抜けた指揮者であったかを証明している。(蔵 志津久)

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  1. 寺尾一郎 さんからのコメント:

    私は現在53歳のクラシック音楽愛好家。カラヤンとの初めての出会いは、小学校3年生の時に母親が買ってきてくれた1枚のレコード。ドイツグラモフォンの直輸入盤でベートーヴェンの交響曲第5番。ジャケットには下から撮影した若々しいカラヤンの指揮姿。以来、熱狂的なファンとなり、1973年のNHKホール落成記念のために来日したときから、カラヤンとベルリン・フィルの来日コンサートは欠かさず行き、レコードから始まった彼の作品収集も、CDに移行し、すべての作品をそろえてしまいました。もちろんLDを購入し始めた途中からDVDに変換して、あわててしまいましたが、映像作品もすべてそろえたカラヤンマニアです。書籍関係もすべてそろえ、熟読。もしかしたら彼の晩年の私設秘書役でもあったウリ・メルクレ氏よりカラヤンのことを知っているかもしれません。
    近日中に私自身が描いたカラヤンの肖像画もブログで公開しようかなと考えています。カラヤンマニアの皆さま、これからもよろしくお願いいたします。

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