クラシック音楽 音楽の泉


2010年11月12日

♪ スター女流指揮者への道を歩む三ツ橋敬子 ♪

 2010年7月17日付けの日本経済新聞に「クラシック界に新風」という記事が掲載されたが、この中で日本でオーケストラ指揮する“30歳前後の指揮者台頭”の状況が紹介されている。登場する若手指揮者は、アンドリス・ネルソンス(ラトビア出身、31歳)、オメール・メイア・ヴェルバー(イスラエル出身、28歳)、ピエタリ・インキネン(フィンランド出身、30歳)、ヤクブ・フルシャ(チェコ出身、28歳)などだ。

 そして、世界の30歳前後の指揮者のスター的存在として、昨年、ロサンゼルス・フィルハーモニックの音楽監督になったゲスターボ・ドゥメルダ(べネズエラ出身、29歳)を挙げている。日本人としては、山田和樹(31歳)、川瀬賢太郎(25歳)、それにイタリアのアントニオ・ペドロッティ国際コンクールで優勝し、現在ミラノで修行中の三ツ橋敬子(30歳)の名前が挙げられている。

 この中の一人、三ツ橋敬子の経歴を見てみよう。1980年東京都生まれ。16歳より指揮を学ぶ。1999年東京藝術大学音楽学部指揮科に入学し、2003年3月に卒業。同年4月同大学大学院音楽研究科指揮専攻に入学、2005年3月修了。 2005年よりローム ミュージック ファンデーションより奨学金を授与され、ウィーン国立音楽大学に留学。指揮科及びオペラ劇場音楽科にて学ぶ。2003・2004年ウィーン音楽ゼミナール・国際指揮マスターコースに参加、同コンクール第1位を獲得。 2004年よりイタリア・シエナのキジアーナ音楽院にてオーケストラ指揮を学ぶ。数回にわたり特別賞奨学金を受ける。 2006年キジアーナ音楽院より最優秀受講生に贈られる名誉ディプロマを授与される。 2008年第10回アントニオ・ペドロッティ国際指揮者コンクールにて日本人として初めて優勝。併せて聴衆賞、アントニオ・ペドロッティ協会賞を獲得、とある。

 この三ツ橋敬子のこれまでの経歴を見ると、シンデレラ物語を読むようなその成功物語のストーリーには驚きだ。これまで、日本の女流指揮者というと、1982年ブザンソン国際指揮者コンクールで女性として史上初、小澤征爾に継いで日本人二人目の優勝者である松尾葉子、そして、28歳のデビューから37歳までロシアを拠点に活動を続け、今人気絶頂の西本智実などを挙げることができる。

 今後、三ツ橋敬子が松尾葉子や西本智実に次いで、スター女流指揮者の座を獲得することになるのか、期待をもって見守って行きたい。(蔵 志津久)(2010/8/2)

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  1. 一見 益男 さんからのコメント:

    蔵 志津久さんと同感につき書き込ませていただきますね。

     昨晩(4/30)初めて、三ツ橋敬子氏の生演奏を聞きにびわ湖ホールまで行ってきました。
     テレビ番組「情熱大陸」で初めて三ツ橋敬子という指揮者を知り、その指揮ぶりに興味をひかれました。
     びわ湖ホールでは4/29-30にラ・フォル・ジュルネびわ湖「熱狂の日」音楽祭があり、ベートーヴェンが今年のテーマでした。
     曲目は「運命」と「合唱幻想曲」(ピアノは仲道郁代)です。

     情熱大陸のときに新日フィルを相手に非常に遠慮がちに練習している風景が印象に残ったのですが、実際の演奏では決して大きくない全身をフルに使って、オケに求めたいことを表現していました。言葉では慎ましく、実際の指揮では大胆にオケに意志を伝えているその姿に見惚れました。

     「運命」は非常にキビキビとした運びでベートーヴェンの音楽の持つ推進力を良く伝えるものでした。一方で第二楽章での叙情性を際立たせることにも欠けていません。結果的に十分な造型感
    を感じることの出来る秀演になっていました。
     「合唱幻想曲」は仲道郁代のピアノが圧巻でしたが、オケと合唱のバランスをうまく取った三ツ橋の指揮ぶりも見事でした。
     聞き終えて、とても充実感の残るコンサートでした。

     このコンサートを聴いて30年くらい前に小澤征爾が大阪フィルを振って、チャイコフスキーの5番をやったコンサートを思い出しました。オケの力は指揮者によって変わるのですね。
     この頃の大フィルは今と比べると随分音は違っていました。もっとくすんだ音だったように記憶しています。でもこのときの演奏はまぎれもなくチャイコフスキーの交響曲がホールを満たしました。一流といわれるオケでなくても、音楽は指揮者次第で一流のものが生まれると言うことを認識した
    このときのコンサートを三ツ橋の「運命」を聞いて思い出しました。

     彼女を表すキーワードは「謙虚」と言うことだと思います。 何か人間的に控えめな日本人的なメンタリティを感じます。
     しかし、それで持ってヨーロッパを拠点に活動する三ツ橋に心から応援を送りたいと思います。
    また、関西での演奏会心待ちにしています。

  2. 蔵 志津久 さんからのコメント:

    一見 益男様

    指揮者の仕事は、自分の心の中で響いている音を、オーケストラに演奏させる(演奏してもらう)ことだと思うんです。一見さんが三ツ橋敬子の指揮を評価したのは、三ツ橋敬子が内面に何か持っているからでしょう。

    私も6月に東京で三ツ橋敬子の指揮を聴きに行きます(ベートーヴェンの「英雄」とピアノ協奏曲第4番)。今から楽しみにしています。

    蔵 志津久

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