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2010年11月23日

♪ 第16回ショパン国際ピアノ・コンクールで日本を含むアジア勢が入賞を果たせなかった原因は? ♪


 

 第16回ショパン国際ピアノ・コンクールが、10月3日―10月20日、ポーランドのワルシャワで開催された。結果は、第1位:ユリアンナ・アヴデーエワ(25歳 ロシア)、第2位:ルーカス・ゲニューシャス(20歳 ロシア/リトアニア)、第2位:インゴルフ・ヴンダー(25歳 オーストリア)、第3位:ダニール・トリフォノフ(19歳 ロシア)、第4位:エフゲニー・ボジャノフ(26歳 ブルガリア)、第5位:フランソワ・デュモン(25歳 フランス)、第6位:該当者なし、という結果となった。

 第1位のユリアンナ・アヴデーエワは、マルタ・アルゲリッチ以来、実に45年ぶりの女性優勝者となったというから凄い。2006年のジュネーブ国際コンクールでの優勝者でもあり、実力発揮といったところであろうか。今回は「ソナタ賞」も併せて受賞した。ロシアからは、第2位にルーカス・ゲニューシャス、第3位にダニール・トリフォノフも入賞し、暫く低迷していたロシアのピアノ界の復興が予見される。

 ポーランドのワルシャワで5年に一度行われる「ショパン国際ピアノ・コンクール」は、3大国際音楽コンクールの一つに挙げられる程、権威があり、ピアニストの憧れのコンクールある。今回は、ショパンの生誕200周年記念大会ということで、大変な盛り上がりだったようである。第1次予選が10月3日―7日、第2次予選が9日―13日、第3次予選が14日―16日、本選が18日―20日というスケジュールで行われた。日本から1985 年の第11回コンクールで第4位入賞を果たしたピアニストの小山実稚恵が審査員として参加したほか、第8回コンクールで第2位入賞の内田光子が記念リサイタルを開催するなど、日本勢の活躍が大いに期待された。

 その結果はどうだったかというと、日本人は17名が予選に参加したが、6名が2次予選に進んだのが最高で、3次予選にも本選に誰も進むことができず、入賞なしというなんとも哀れな結果に終わってしまった。過去の日本人の成績はというと、日本人はまだ優勝者こそ出していないが、田中希代子(第10位、第5回)、内田光子(第2位、第8回)をはじめ多くの入賞者を出してきており、特に1980年の第10回大会からは毎回入賞者を出すという輝かしい伝統を誇ってきた。しかしながら、今回その輝かしい伝統は崩れ去ってしまったのだ。

 今回は、世界各国から17歳から30歳までの355人が応募し、予備審査を通過した81人がコンクールで腕を競った分けであるが、日本人出場者は17人と過去最大の人数となり、地元のポーランド(7人)やアメリカ(5人)、フランス(4人)などを大きくしのぎ、国別でもロシア(12人)を上回る最大勢力になった・・・のにこの情けない結果に終わってしまった原因は何か。注目すべきは、最近の主だった国際コンクールで上位入賞を果たしてきたアジア勢(中国:8人、台湾:5人、韓国:4人)が、今回のショパンコンクールでは入賞を果たせなかったことである。

 これには、今回から審査方法が変更され、ポーランド人出身者の審査員が半減したことにも影響しているかもしれない。私が危惧するのは、最近の国際コンクールの様子を見ると、アジア勢が力に任せたテクニックで入賞をもぎ取るといったケースが目に付き始めたこと。ひょっとして、ヨーロッパの審査員は、そんな風景を目にしてアジア出身者へ厳しい目を向け始めたのではないだろうか。つまり「音楽はテクニックだけではない」と。審査員の小山実稚恵も「(日本人は)近道をして結果を早く出したい、そんな傾向が見えました」と印象を語っている。

 一方で、日本にとってうれしいニュースがなかったわけではない。それは、アヴデーエワがヤマハのピアノ「CFX」を使用して優勝したことで、ショパン・コンクールの歴史のなかで、日本製のピアノを弾いて優勝者が出たのはこれが初の"快挙”という。これにより、日本製ピアノの実力が世界に認められたことになる。そして、ボジャノフを除く入賞者5人が、2011年1月に行われる「ショパン国際ピアノ・コンクール2010入賞者ガラ・コンサート」に出演し来日することが決定した。共演はアントニ・ヴィット指揮のワルシャワ国立フィル。東京・Bunkamuraオーチャードホール(2011/1/22、1/23)他、全6都市での開催されるという。コンクールで敗れ去った日本が、楽器では勝利し、入賞者のコンサートをいち早く開催に漕ぎ着けた・・・というなんとも皮肉な結果になってしまったようだ。(蔵 志津久)

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