2016年3月08日
アイノラ交響楽団は、第13回定期演奏会において、ベリウスの遺族より許可の下、シベリウスの交響曲第5番の1915年の初稿と1919年の最終稿を、1回の演奏会で演奏する。通常、シベリウスの交響曲第5番は、最終稿が演奏されるが、同じ演奏会で初稿も演奏されることにより、二つの版の聴き比べが可能となる、貴重な機会といえる。
アイノラ交響楽団は、シベリウスをこよなく愛するアマチュア演奏家により、2000年12月に創設され、以後、1年に1回、定期演奏会を開催して、シベリウスの作品を演奏している。因みに、アイノラ交響楽団のアイノラとは、フィンランド語で「アイノのいる場所」という意味で、シベリウスは最愛の夫人「アイノ」の名にちなみ、ヘルシンキ郊外のヤルヴェンパーの自邸をアイノラと呼び、そこで多くの傑作を創り上げた。
シベリウスの交響曲第5番は、1915年、シベリウスの50歳の誕生日に合わせて作曲された。少し急いでつくられたためか、初演の後、直ぐに改訂稿に着手し、翌1916年に完成。初稿では第1楽章と第2楽章に分かれていたものが、改訂稿では一つの楽章にまとめられている。そして、1919年に最終稿が完成する。
通常、シベリウスの交響曲第5番は、この最終稿版が演奏されるが、2015年のシベリウス生誕150年を機に、初稿版が演奏される機会も多くはなってきている。しかし、1回の演奏会で、初稿版と最終稿版とが同時に演奏される機会は極めて稀。指揮は、日本シベリウス協会会長で、愛知室内オーケストラ常任指揮者を務める、アイノラ交響楽団正指揮者の新田ユリ。
新田ユリは、自著の「ポポヨラの調べ~指揮者がいざなう北欧音楽の森~」(五月書房刊)の中で、シベリウスの交響曲第5番を次のように紹介している。「7曲の交響曲の中で比較的構成が明確で重厚な趣があるとされる『第5番』。しかし楽譜を見てみると白い部分が多い。キャンパスの使い方が上手な作曲家、シベリウス。その音の遠近法は、音符を記さずとも聞こえることがたくさんあることを教えてくれる」(蔵 志津久)
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<アイノラ交響楽団 第13回定期演奏会>
シベリウス:春の歌 作品16(1894年/初稿)
交響曲第5番変ホ長調 作品82(1915年/初稿)
吟遊詩人 作品64
交響曲第5番変ホ長調 作品82(1919年/最終稿)
指揮:新田ユリ
管弦楽:アイノラ交響楽団
会場:杉並公会堂大ホール(東京都杉並区)
日時:2016年4月10日(日) 14:00開演(13:15開場)