クラシック音楽 音楽の泉


2015年4月12日

【2015年はシベリウス生誕150年―名曲・名盤⑤】


シベリウス:交響曲全集(第1番~第7番)

       交響詩「トゥオネラの白鳥」
       悲しきワルツ

指揮:渡辺暁雄

管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団

録音:1981年6月19日(第3番)<習志野文化ホール>
            22日(第6番)
            25日(第2番)<昭和女子大学人見記念講堂>
          7月 1日(第7番)
             2日(第5番)
          9月 8日(第Ⅰ番/トゥオネラの白鳥)
              9日(第4番/悲しきワルツ)

CD:DENON COCO‐6681~4

 指揮者の渡辺暁雄(1919年―1990年)は、日本人の牧師を父に、フィンランド人の声楽家を母に東京で生まれた。1942年、東京音楽学校(現東京芸術大学)卒業後、ヴァイオリン、ヴィオラ奏者として活躍し、後に指揮者に転向。1948年、東京フィルハーモニー交響楽団の初代常任指揮者に就任。この間、ジュリアード音楽院に留学。1956年、日本フィルハーモニー交響楽団の創設に参画し、同楽団を第一級のオーケストラに育て上げた。1958年、フィンランド政府より獅子勲章第一級騎士賞を受賞。1963年、シンフォニー・オブ・ジ・エアーを指揮してニューヨークでのデビューを果たす。その後、ロン=ティボー音楽コンクールの審査員を務めるなど、国際的な活動を展開した。この渡辺暁雄が、シベリウス:交響曲全集を日本で録音し、発売されたのがこの4枚組のCDである。演奏内容は、細部にわたって渡辺暁雄の繊細で、しかもスケールの大きい優美な指揮ぶりが光る。日本フィルも、渡辺の期待に応えるべく全力を出し切って演奏していることが、録音を通してよく聴き取れる。これは、将来にわたって永久保存されるべき記念碑的録音だ。

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2015年4月11日

【2015年はシベリウス生誕150年―名曲・名盤⑥】


シベリウス:組曲「恋人(弦楽合奏のための)」(①恋人②恋人の径③おやすみなさい、さようなら)
        ロマンス ハ長調(弦楽合奏のための)
        悲しき円舞曲
        レンミンカイネンの帰郷
        交響詩「フィンランディア」
        交響詩「ポポヨラの娘」

指揮:サー・ジョン・バルビローリ

管弦楽:ハレ管弦楽団

CD:東芝EMI TOCE‐6428

 このCDは、シベリウスの小品を、イギリス出身の名指揮者であったサー・ジョン・バルビローリ(1899年―1970年)が指揮したもの。小品と言っても小さな作品という意味ではなく、演奏時間が比較的短い作品ということである。シベリウスの代名詞にもなっている交響詩「フィンランディア」が収められているし、内容の充実したことで高く評価されている交響詩「ポポヨラの娘」も収められていることからも分かろう。バルビローリは、1936年ニューヨーク・フィルの首席指揮者に30代の若さで抜擢される。1943年イギリスのハレ管弦楽団の音楽監督に就任し、同楽団を一級のオーケストラに育て上げた。その後、ヒューストン交響楽団の常任指揮者を歴任。後期ロマン派を得意とし、中でシベリウスを振らせたら当代随一との高い評価を得ていた。こCDでもそのことが如何なく発揮され、全体的に優雅で、北欧の透き通ったな空気が肌で感じられるような、優美さに満ち満ちた演奏内容に、思わず吸い寄せられる。

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2015年4月10日

【2015年はシベリウス生誕150年―名曲・名盤⑦】



シベリウス:独唱、合唱付き交響詩 「クレルヴォ」 (通称:クレルヴォ交響曲)
           
           ①導入部②クレルヴォの青春③クレルヴォとその妹
           ④クレルヴォは戦場に行く⑤クレルヴォの死

       カンタータ 「故郷」

       「火の起源」 (バリトン独唱と男声合唱、オーケストラによる)

指揮:パーヴォ・ベルグルンド

管弦楽:ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団

メゾ・ソプラノ:エーヴァ=リーサ・サーリネン

バリトン:ヨルマ・ヒュンニネン

合唱:ソヴィエト・ロシア国立アカデミー・エストニア男声合唱団
    ヘルシンキ大学男声合唱団
    アカデミー合唱協会

録音:1985年6月

CD:ワーナーミュージック・ジャパン WPCS‐23127~8

 このCDには、シベリウスの独唱、合唱付き交響詩「クレルヴォ」(通称:クレルヴォ交響曲)とカンタータ「故郷」それにバリトン独唱と男声合唱、オーケストラによる「火の起源」が収められている。指揮は、シベリウスのスペシャリストとして世界的に有名であったフィンランド出身のパーヴォ・ベルグルンド(1929年―2012年)。ベルグルンドは、生涯でシベリウスの交響曲全集を3度も完成させている。フィンランド放送交響楽団首席指揮者、ボーンマス交響楽団首席指揮者、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団音楽監督を歴任した。これは、そんなベルグルンドが、1970年に続き、1985年に録音した二度目のクレルヴォ交響曲である。クレルヴォ交響曲は、若きシベリウスが作曲した演奏時間が80分を超える大作で、フィンランドの国民的叙事詩「カレワラ」のクレルヴォの物語に題材をとった作品。ベルグルンドは、悲劇の主人公であるクレルヴォの生涯を、深みのある劇的な表現力により、リスナーを掴んで離さない名演奏を聴かせる。それに加えて、カンタータ「故郷」のなんと美しい演奏のことか。さらに「火の起源」のなんと力強い演奏のことか。

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2015年4月09日

【2015年はシベリウス生誕150年―名曲・名盤⑧】



シベリウス:ヴァイオリン協奏曲

ヴァイオリン:ヴィクトリア・ムローヴァ

指揮:小澤征爾

管弦楽:ボストン交響楽団

録音:1985年10月17日~19日、ボストン、シンフォニーホール

CD:日本フォノグラム(フィリップスレコード) 35CD‐525

 このCDは、1981年ヘルシンキのシベリウス国際コンクールの優勝者でロシア出身のヴィクトリア・ムローヴァと小澤征爾指揮ボストン交響楽団の共演で、ムローヴァのCDデビュー盤にあたるもの。シベリウス国際コンクールの優勝の翌年、ムローヴァはチャイコフスキー国際コンクールでも優勝を果たし、正に当時ヴァイオリンの女王と呼べるに相応しい地位にあった。ところが1983年、ヘルシンキから招待された機を捉え、ムローヴァはスウェーデンに亡命。さらにアメリカへ渡り、その後は世界的な場での大活躍となる。シベリウス:ヴァイオリン協奏曲は、シベリウスがヘルシンキから郊外のヤルヴェンパーの私邸「アイノラ」に移る直前に作曲された曲。ヘルシンキでの社交的な生活はシベリウスにとって決して幸福なものではなかったらしく、さらに当時耳の病気にも悩まされていた。そんな暗い気分の中でつくられたのが、このヴァイオリン協奏曲だ。曲全体を憂いを含んだ雰囲気が覆う。逆に、このことが古今のヴァイオリン協奏曲の名曲の一つとして、不動の地位にした要因にもなっているようだ。ここでのムローヴァは、小澤征爾指揮ボストン交響楽団のメリハリのある伴奏にも助けられ、陰影に富んだ、伸びやかな、そして滋味あふれる名演を聴かせる。

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2015年4月08日

【2015年はシベリウス生誕150年―名曲・名盤⑨】


シベリウス:弦楽四重奏曲ニ短調op.56「親愛なる声」

弦楽四重奏:巖本真理弦楽四重奏団

           第1ヴァイオリン 巖本真理
           第2ヴァイオリン 友田啓明
           ヴィオラ       菅沼準二
           チェロ        黒沼俊夫

CD:東芝EMI CC30‐3653

 シベリウスの学生時代の3曲の弦楽四重奏曲は現在ほとんど演奏されないため、op.56のこの曲が実質的に唯一演奏されるシベリウスの弦楽四重奏曲である。作風は弦楽四重奏というよりも弦楽合奏に近く、実際、弦楽合奏で演奏されることもある。1908年から1909年にかけて作曲され、全部で5楽章からなっている。シベリウスはこの頃、喉の手術を行い、好きだった酒やたばこを遠ざけなければならない生活に陥ったこともあり、暫くの間、内向的、内省的な精神状況が続く。シベリウスはこの曲を「死の時であっても微笑みたくなるようなもの」と愛妻のアイノ夫人に言ったという(新田ユリ著「ポポヨラの調べ」五月書房刊)。このCDで演奏しているのは、伝説のカルテットとも言うべき巖本真理弦楽四重奏団である。ヴァイオリニストの巖本真理(1926年―1979年)は、1937年日本音楽コンクールで1位となり、一躍天才少女と呼ばれ脚光を浴びる。独奏活動を経て、1964年に「巌本真理弦楽四重奏団」を結成。1973年NHK第24回放送文化賞受賞など、数々の賞を受賞する。1971年に録音されたこのCDでは、4人の奏者の息がぴたりと合い、一部の隙のない演奏を披露する。シベリウスの切ない心境を反映させた優れた演奏内容だ。録音状態も良く、現役のCDとして十分に通用するほどの名演となっている。

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2015年4月07日

【2015年はシベリウス生誕150年―名曲・名盤⑩】


シベリウス:「樹の組曲」op.75

          ピヒヤラの花咲く時
          孤独な松の木
          ポプラ
          白樺
          樅の木

       故郷にてop.74-4
       ロマンスop.101-1
       キャプリスop.24-3

ピアノ:舘野 泉

CD:ポニーキャニオン D32L 0001

 このCDは、「舘野 泉/フィンランド ピアノ名曲 ベストコレクション」シリーズの第1巻で、この冒頭にはシベリウスのピアノ小品4曲が収められている。フィンランド音楽をわが国に紹介したことで知られる館野 泉が演奏している。舘野 泉(1936年生まれ)は、東京出身。東京藝術大学音楽学部ピアノ科を首席で卒業。1964年よりヘルシンキに在住し、シベリウスをはじめとしたフィンランドの作曲家の作品に取り組み、日本シベリウス協会会長も務めた。1968年、メシアン・コンクールで第2位。同年より国立シベリウス・アカデミーの教授を務め、1981年以来は、フィンランド政府より芸術家年金を与えられる。2002年、フィンランド・タンペレでのリサイタル中に脳溢血で倒れ、その後遺症として右半身に麻痺が残ってしまう。しかし、2003年に復帰を果たし、以降、左手のためのピアノ作品を演奏することになる。このCDには、舘野 泉がまだ両手で演奏した頃のシベリウスの作品が収められている。「樹の組曲」について、このCDのライナーノートで舘野 泉は「最近私の弾く『樹の組曲』を聴いたある人が、こんな小さい曲がとても大きな曲に聴こえる、と言って不思議がっていた。シベリウスの作品はどんな小さくとも、奥が深く流石である」と書いている。ここに収められたシベリウスの4曲のピアノ小品は、舘野 泉の手にかかることによって、いずれも圧倒的な存在感を示している。

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2015年4月06日

【2015年はシベリウス生誕150年―名曲・名盤⑪】


~シベリウス:珠玉のピアノ小品集~

シベリウス:即興曲 作品5-5
       即興曲 作品5-6
       カプリス 作品24-3
       ロマンス 作品24-4
       ワルツ 作品24-5
       田園詩 作品24-6
       ロマンス 作品24-9
       舟歌 作品24-10
       ワルツ 作品34-1
       踊りの歌 作品34-2
       からかい 作品34-5
       偵察 作品34-9
       追憶 作品34-10
       ユモレスク 作品40-3
       子守歌 作品40-5
       ロンドレット 作品40-7
       ポロネーズ 作品40-10
       ピヒラヤの花咲く時 作品75-1
       孤独な松の木 作品75-2
       はこやなぎ 作品75-3
       白樺 作品75-4
       樅の木 作品75-5
       エチュード 作品76-2
       子供のための小品 作品76-8
       エレジアーコ 作品76-10
       リンネ草 作品76-11
       やぐるま草 作品85-1
       カーネーション 作品85-2
       あやめ 作品85-3
       おだまき (金魚草) 作品85-4
       つりがね草 作品85-5
       リート (歌) 作品97-2
       小さなワルツ 作品97-3
       即興曲 作品97-5

ピアノ:マリタ・ヴィータサロ

CD:ワーナーミュジック・ジャパン WPCS21229

 シベリウスは、ほぼ生涯のすべての時期にピアノ曲を作曲している。これらのピアノの作品は、全作品数の約四分の一の100曲余りにも上るが、それらはすべて小品である。そんなことがあり、多くの場合、有名な「樹の組曲」(ピヒヤラの花咲く時、孤独な松の木、ポプラ、白樺、樅の木)作品75などの曲を除き、あまり演奏会で取り上げられることはない。ところがこのCDには全部で34曲が収められ、シベリウスのピアノ曲を知るにはこの上ない録音となっている。演奏しているのは、ソリストのほか、室内楽、声楽伴奏で活躍し、シベリウス・アカデミーのピアノ科教授でもあるマリタ・ヴィータサロ。これらのピアノ小品は、聴く機会が少ないが、一度聴くと以前聴いたことがあるような、そして何とも郷愁を覚える曲ばかりだ。ついメンデルスゾーンの無言歌やグリークの叙情小曲集を思い浮かべてしまう。しかも、それらの曲に少しも劣らないほど名作揃いなのだ。そして、このCDで弾いているマリタ・ヴィータサロの抒情味溢れるチャーミングなピアノ演奏は、正に絶品と言えるもの。

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2015年4月05日

【2015年はシベリウス生誕150年―名曲・名盤⑫<最終回>】


~シベリウス歌曲集~

メゾ・ソプラノ:マリア・ホロパイネン

ピアノ:舘野 泉

シベリウス:海辺のバルコニーで
       春はいそぎゆく
       黒い薔薇
       少女が野原で歌っている
       秋の夕べ
       おののく胸から
       静かな町
       泳げ、泳げ青い鴨
       山彦の妖精
       夕映えのようにゆるやかに
       私が夢みるとき
       逢引きから帰った乙女
       三月の雪の上のダイヤモンド
       夕べに
       はじめての口づけ
       川面にただよう木屑
       葦よそよげ
       夢なりしか?
       ひともとの樹
       水の精

CD:東芝EMI CE30-5499

 シベリウスというと交響曲や交響詩などの勇壮な曲を思い浮かべるが、約100曲ほどの歌曲も残している。これらの歌曲作品の中には、10曲ほどのオーケストラ伴奏の曲も含まれているが、それ以外は、ピアノ伴奏の小品が多くを占めている。これらピアノ伴奏の歌曲は、小品を数曲ずつセットにして、一つの作品番号にして出版したものが多く、同じ作品番号だからといって相互の関連性はほとんどない。このCDで、そんなシベリウスの歌曲を歌っているメゾ・ソプラノのマリア・ホロパイネンは、ピアノ伴奏をしている舘野 泉の夫人である。マリア・ホロパイネンは、ヘルシンキ生まれ。1970年に最優秀でシベリウス・アカデミーを卒業し、翌年デビューを果たす。このCDのライナーノートでは「マリア・ホロパイネンの歌う北欧歌曲には北欧の自然と人間の持つ厳しさや孤独感、あるいはまた爽やかな抒情が端正で知的なたたずまいの中で、率直に歌い上げられている」と紹介されている。このCDに収められているシベリウスの歌曲20曲は、いずれも内容が深く、充実しており、一度聴くとそれらは、リスナーの印象に強く残り、決して離れることはない。歌曲作曲家としてのシベリウスは、今後再評価されるべきだろう。

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2013年12月03日

♪ クラシック音楽へのお誘い<7>ドビュッシー(ビュッセル編曲):小組曲


ドビュッシー(ビュッセル編曲):小組曲

指揮:ジャン・マルティノン

管弦楽:フランス国立放送局管弦楽団

CD:EMIミュージック・ジャパン TOCE-59033

 ドビュッシーの「小組曲」は、最初、1889年にピアノの4手連弾曲として作曲された。①小舟にて②行列③メヌエット④バレエーの4つの小曲からなっている。いずれの曲も実に愛らしく、一度聴くと印象に強く残る曲ばかりである。それぞれの曲は、何か美術館で絵画を見ているように情景が浮かび上がるので、クラシック音楽の初心者でも直ぐに馴染める曲だ。後に、アンリ・ビュッセルが管弦楽用に編曲したが、現在ではこの管弦楽用の小組曲の方が有名となり、演奏会でもしばしば取り上げられている。

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2013年11月04日

♪ クラシック音楽へのお誘い<6>シューベルト:歌曲集「美しい水車小屋の娘」


 

シューベルト:歌曲集「美しい水車小屋の娘」

バリトン:ヘルマン・プライ

ピアノ:レナード・ホカンソン

CD:マーキュリー・ミュージックエンタテインメント

 シューベルトの「美しき水車小屋の娘」は、全20曲からなる歌曲集。「冬の旅」「白鳥の歌」と並び「シューベルトの3大歌曲集」と呼ばれる。1823年5月~11月に作曲され、内容は「修業の旅に出た粉職人の若者が、美しい水車小屋の娘に恋をするが、狩人が現れて彼女を奪ってしまう。悲しく立ち去る若者は小川に語りかけ、永遠の眠りにつく」というミュラーの詩集から20曲を作曲したもの。非常に美しい歌曲集で、若者の揺れ動く心理が聴く者の心を打つ。

 

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