クラシック音楽 日本の歌


2014年7月04日

♪ 「日本の歌」のルーツを訪ねて 30(最終回) 日本の歌曲


~日本の歌曲~

からたちの花      中沢 桂  北原白秋・詩/山田耕筰・曲
この道          伊藤京子 北原白秋・詩/山田耕筰・曲
花             中村邦子 武島羽衣・詩/滝廉太郎・曲
              木村宏子  
荒城の月        立川清登  土井晩翠・詩/滝廉太郎・曲
浜辺の歌        中沢 桂  林 古渓・詩/成田為三・曲
椰子の実        中沢 桂  島崎藤村・詩/大中寅二・曲
砂山           伊藤京子  北原白秋・詩/山田耕筰・曲
波浮の港        中村 健  野口雨情・詩/中山晋平・曲
平城山          中沢 桂  北見志保子・詩/平井康三郎・曲
赤とんぼ         中沢 桂  三木露風・詩/山田耕筰・曲
初恋            中沢 桂  石川啄木・詩/越谷達之助・曲
浜千鳥          中沢 桂  鹿島鳴秋・詩/弘田竜太郎・曲
城ケ島の雨       中村 健  北原白秋・詩/梁田貞・曲
早春賦          中村邦子  吉丸一昌・詩/中田章・曲
夏の思い出       伊藤京子  江間章子・詩/中田喜直・曲
花のまち         中村浩子  江間章子・詩/団伊玖磨・曲
叱られて         中沢 桂  清水かつら・詩/弘田竜太郎・曲
中国地方の子守唄   中沢 桂  日本古謡/山田耕筰・曲
鉾をおさめて       立川清登  時雨音羽・詩/中山晋平・曲
ペチカ           立川清登  北原白秋・詩/山田耕筰・曲
曼珠沙華         中沢 桂  北原白秋・詩/山田耕筰・曲
野薔薇          中沢 桂  三木露風・詩/山田耕筰・曲
出船            中沢 桂  勝田香月・詩/杉山長谷夫・曲
宵待草          中沢 桂  竹久夢二・詩/多忠亮・曲
雪の降る町を      中村浩子  内村直也・詩/中田喜直・曲
さくらさくら        伊藤京子  日本古謡/山田耕筰・曲

ピアノ:三浦洋一

録音:1973年/1974年/1976年、ビクター青山スタジオ

CD:ビクター音楽産業 VDR-28057

 このCDの録音は、1973年と1976年に、ビクター青山スタジオで行われた。録音したのは、当時の声楽界(二期会)の第一人者たちであり、わが国クラシック音楽界の最高峰にあった人たちでもあった。それだけに「日本の歌」をクラシック音楽の一つのジャンルとして捉え、あたかもシューベルトの歌曲を歌うかごとくに「日本の歌曲」として歌っている。それだけに格調が高く、これほど正統性に満ちた録音は、あまりほかに聴くことができない。出演者の中には既に亡くなっている方もおられるが、このCDのライナーノート(木村重雄氏)から、その横顔を紹介しよう。

 <伊藤京子>オペラ「夕鶴」(團伊玖磨)の公演の成功を円熟した至芸で支えるなど、1960年代の創作オペラ運動で不可欠な役割を演じてきた。

 <中沢桂>イタリア・オペラのプリマ・ドンナ役をはじめとする広範なレパートリーにより、1970年代を中心に多彩なコンサート活動を展開した。

 <中村邦子>そのリリシズムは、洗練された歌唱により、つねに作品の姿をありのまま描き出す。日本歌曲のリサイタルにより1981年度の文化庁芸術祭優秀賞を受賞した。

 <中村浩子>フランスと日本の現代歌曲の解釈と表現は、つねに的確で、不必要な要素を一切さしはさむことがなく、安定性をうかがわせるところから、きわめて信頼度が高い歌手。

 <木村宏子>端正なうちにも豊かな詩情をただよわせた演奏を聴かせる。オラトリオ歌手として長い生命力を持つことも、それと無縁でない。

 <中村健>知的な抑制の利いた演奏により、独自の存在になっている。現代の英国でピーター・ピアーズが果たしたような創造的な役割を日本で実践しているのが、彼の仕事と言ってよい。

 <立川清登>日本のクラシック音楽愛好家の層を拡げるという点での功績はきわめて大きい。これは、ひと前で歌うということについて本能的な巧みさを備えているからで、こうした要素を持つ声楽家は、ありそうでいて極めて少ない。

 <三浦洋一>ピアノ伴奏において、日本歌曲の解釈で、多くの作曲者より、多大の信頼を寄せられている。声楽家たちの生理を十分に咀嚼した彼の音楽が、このCDでも新鮮な生命力をもたらしている。

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2014年7月03日

♪ 「日本の歌」のルーツを訪ねて 29 東京混声合唱団


~林 光(編曲)による 東混/日本の抒情歌~

城ヶ島の雨        北原白秋・詩/梁田 貞・曲
お菓子と娘        西条八十・詩/橋本国彦・曲
箱根八里(箱根の山) 鳥居 枕・詩/滝廉太郎・曲
椰子の実          島崎藤村・詩/大中寅二・曲
カチューシャの唄     島村抱月・詩/中山晋平・曲
からたちの花       北原白秋・詩/山田耕筰・曲
鉾をおさめて        時雨音羽・詩/中山晋平・曲
中国地方の子守歌   日本古謡/山田耕筰・曲
荒城の月          土井晩翠・詩/滝廉太郎・曲
浜辺の歌           林 古渓・詩/成田為三・曲

編曲:林 光

指揮:田中信昭

合唱:東京混声合唱団

ピアノ:林 光/金谷良三/原田史郎/伊東悦子

録音:1973年3月19日~20日、ビクター第1スタジオ

LP:ビクター音楽産業 SJX‐1066

 多くの日本の歌は、独唱用に書かれている。これに対し西洋の教会音楽を発祥とするクラシック音楽は、合唱曲が大きな役割を演じていることが多い。それでは日本の歌を合唱団が歌たったらどうなるか。そんな新しい試みに、今から40年ほど前の1973年に挑戦したのがこの録音である。戦後の作曲界を牽引した林光(1931年ー2012年)が日本の歌を合唱曲用に編曲し、創設者の田中信昭(1928年生まれ)が東京混声合唱団を指揮をしている。これが誕生した経緯は、林光と田中信昭と指揮者の岩城宏之(1932年ー2006年)の三人が話しているとき「合唱曲に、誰もが知っているものがあまりないなぁ。それなら日本人がよく知っている曲を、合唱曲に編曲したらいいじゃないか」ということで実現したという。林光は「編曲については、原曲が持っている要素を、無理しないでふくらませることにとどめる。また、ピアノパートは、伴奏というより協奏にちかく、それがこの歌曲集の特徴といってもいい。この編曲は、ぼくが敬愛する諸先輩たちに、いくらかの批判をこめつつ捧げるオマージュだ」と書き残している。東京混声合唱団(略称:東混)は、1956年に、田中信昭および、彼を含む東京藝術大学声楽科の卒業生20数名によって結成された。創立者の田中信昭の意向により、今でも日本の合唱曲の創作および普及に重心が置かれている。私は今から40年以上前のこの録音を愛聴している。どこからともなく、暖かくも柔らかい音色が、全身をつつむように聴こえてくるのだ。そして同時に、そこにはどことなく静寂さが宿っている。今から40年前の日本は、今とは比べものにならないほど貧しかった。しかし、心は今と同じ、いや今以上に豊かだったことが、この録音を通して聴き取れる。私は、いつもこの録音を聴くと、一緒に口ずさむ。聴き終ると「日本に生まれてきてほんとによかったな」とすら思う。私が所有しているのは1973年発売のLPレコードだが、現在でもCDで購入可能なようなので、是非、一度機会があれば聴いてみてほしい。作曲、作詩、編曲、指揮、合唱、ピアノ伴奏のいずれを取っても、その志の高さに今でも感動させられる。

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2014年7月01日

♪ 「日本の歌」のルーツを訪ねて 28 福井 敬


落葉松            野上 彰・詞/小林秀雄・曲
荒城の月           土井晩翠・詞/瀧 廉太郎・曲
秋の月            瀧 廉太郎・詞・曲
出船              勝田香月・詞/杉山長谷夫・曲
鐘が鳴ります        北原白秋・詞/山田耕筰・曲
待ちぼうけ          北原白秋・詞/山田耕筰・曲
宵待草            竹久夢二・詞/多 忠亮・曲
かやの木山の        北原白秋・詞/山田耕筰・曲
城ヶ島の雨          北原白秋・詞/梁田 貞・曲
初恋              石川啄木・詞/越谷達之助・曲
野の羊            大木惇夫・詞/服部 正・曲
さくら横ちょう         加藤周一・詞/別宮貞雄・曲
悲しくなったときは      寺山修司・詞/中田喜直・曲
ひぐらし            北山冬一郎・詞/團 伊玖磨・曲
紫陽花            北山冬一郎・詞/團 伊玖磨・曲
恋のかくれんぼ       谷川俊太郎・詞/武満 徹・曲
ぽつねん           谷川俊太郎・詞/武満 徹・曲
死んだ男の残したものは 谷川俊太郎・詞/武満 徹・曲
小さな空            武満 徹・詞・曲
見上げてごらん夜の星を  永 六輔・詞/いずみたく・曲

テノール:福井敬

ピアノ:谷池重紬子

録音:2010年9月7日~8日、11月9日、相模湖交流センター

CD:ディスク クラシカ ジャパン DCJA-21019

 このCDは、日本のテノールの第一人者である福井敬が満を持して録音した日本の歌のアルバムである。3年ほど前の発売なので“日本の歌のルーツを訪ねて”というには少々気が引けるが、その内容は、これまでの日本の歌のイメージとはまた違う、新しい面に光を当てた優れたものに仕上がっている。朗々と歌う福井敬の日本の歌は、“力強い抒情味”とでも言ったらいいのであろうか。聴いた後には、何か吹っ切れたような清々しさがあるのである。そして、何より日本語の美しい発音が一際光り輝く。福井敬は、岩手県出身。国立音楽大学声楽科卒業、同大学院修了。二期会オペラスタジオ修了。90・94年文化庁派遣芸術家在外研修員等によりイタリアに留学。92年二期会創立40周年記念「ラ・ボエーム」ロドルフォ役でデビュー以来、数々のオペラ作品に主演。第20回イタリア声楽コンコルソでミラノ大賞(第1位)、第20回ジロー・オペラ賞新人賞、第4回五島記念文化賞オペラ新人賞、第44回芸術選奨文部大臣賞新人賞、第25回ジロー・オペラ賞、第9回出光音楽賞、第33回エクソンモービル音楽賞洋楽部門本賞など多くの受賞歴を持つ。正に、福井敬は、国宝級の輝く美声をもつ日本が世界に誇るスーパー・テナーとして、現在オペラを中心に大活躍をしている。なお、「ファンによるファンのための非公式サイト『福井敬.net』」の「ディスコグラフィ」で「日本歌曲CD製作レポートNo1~5」を見ることができる。

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2014年6月29日

♪ 「日本の歌」のルーツを訪ねて 27 松本美和子


~日本の名歌を歌う~

からたちの花      北原白秋・詩/山田耕筰・曲
花林            杉浦伊作・作/畑中良輔・曲
さくら横ちょう       加藤周一・詩/別官貞雄・曲
さくらさくら        日本古謡/山田耕筰・編曲
しぐれに寄する抒情  佐藤春夫・詩/大中恩・曲
城ケ島の雨       北原白秋・詩/梁田 貞・曲
落葉松          野上彰・詩/小林秀雄・曲
サルビア         堀内幸枝・詩/中田喜直・曲
ちいさい秋みつけた  サトウハチロー・詩/中田喜直・曲
ねむの木の子守唄   皇后陛下・御作詩/岡本正美・曲
時計台の鐘       高階哲夫・詩/曲
霧と話した        鎌田忠良・詩/中田喜直・曲
水色のワルツ      藤浦 洸・詩/高木東六・曲
野薔薇          三木露風・詩/山田耕筰・曲
砂山           北原白秋・詩/山田耕筰・曲
ちんちん千鳥      北原白秋・詩/近衛秀麿・曲
待ちぼうけ        北原白秋・詩/山田耕筰・曲
赤いかんざし      貴志康一・詩・曲
母             竹久夢二・詩/小松耕輔・曲)
子守唄          野上彰・詩/団伊玖麿・曲)

ソプラノ:松本美和子

ピアノ:椎野伸一

録音:1994年5月26日~27日、松本ハーモニーホール

CD:日本ビクター VICC-176

 このCDは、今やわが国声楽界の重鎮である松本美和子がリリースした2枚目の「日本の歌」である。1枚目は、「荒城の月」から「夏の思い出」「花のまち」まで、「日本の歌」の定番とも言える曲目を集めてあるのに対し、2枚目は、松本美和子の曲目の選択のセンスが光る「日本の歌」のアルバムとなっている。例えば、「時計台の鐘」とか「水色のワルツ」などは、その昔、ラジオからしょっちゅう流れてきた名曲だが、さすが最近では、あまり聴く機会が無くなっている。今聴いてみると、どちらの曲もシンプルな中に、「日本の歌」の特徴である抒情味が溢れんばかりに盛り込まれており、聴き終えた後もその余韻に浸ることができる。松本美和子の暖かくも、丸みのある音質でこれらの曲を聴いていると、「日本の歌」の格調の高さが、他の歌手の何倍にもなって聴こえてくる。松本美和子は、奈良市出身。武蔵野音楽大学卒業後、1965年ローマ・サンタ・チェチーリア音楽院を首席で卒業。1967年ジュネーヴ国際音楽コンクール2位、マリア・カナルス国際音楽コンクール2位。1972年ローマ・アカデミア・サンタ・チェチーリア修了。1986年ジロー・オペラ大賞、1990年新日鉄音楽賞特別賞、1998年モービル音楽賞などを受賞する。2006年紫綬褒章を授与される。2012年旭日小綬章を叙勲。現在、母校である武蔵野音楽大学の特任教授として後進の指導にも当たっている。

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2014年6月26日

♪ 「日本の歌」のルーツを訪ねて 26 尺八


武満徹:ノヴェンバー・ステップス      ~尺八と琵琶とオーケストラのための~
     ア・ストリング・アラウンド・オータム ~ヴィオラとオーケストラのための~
     弦楽のためのレクイエム           ~弦楽オーケストラのための~
     セレモニアル                  ~オーケストラと笙のための~
     マイ・ウェイ・オブ・ライフーマイケル・ヴァイナーの追憶にー 
                     ~バリトン、混声合唱、オーケストラのための~

詩:田村隆一

指揮: 小澤征爾

管弦楽:サイトウ・キネン・オーケストラ

尺八:横山勝也

琵琶:鶴田錦史

ヴィオラ:今井信子

バリトン:ドウェイン・クロフト

合唱:東京オペラシンガーズ

CD:ユニバーサルミュージック PHCP-21036

 武満徹(1930年―1996年)の「ノヴェンバー・ステップス」は、日本古来の楽器である尺八が、琵琶、オーケストラともに演奏されるという野心的な作品だ。武満徹は、独学で世界的名声を得た数少ない作曲家である。1957年、「弦楽のためのレクイエム」を発表したが、当時の日本の作曲界はこれを完全に無視。しかし、この作品のテープを、1959年にたまたま来日していたストラヴィンスキーがNHKで聴き、絶賛したことで初めて日の目を見ることになり、後の世界的評価へと繋がる。武満徹は、小林正樹監督の「切腹」、羽仁進監督の「不良少年」、勅使河原宏監督の「砂の女」など、数多くの映画音楽も手掛けた。これらの映画音楽には、尺八、琵琶、笙など、日本古来の楽器が多く使われており、これらを基に琵琶と尺八の二重奏曲「エクリプス」を作曲。この作品は、小澤征爾を通じてニューヨーク・フィルの音楽監督レナード・バーンスタインに伝えられ、これにより、同楽団の125周年記念の委嘱作品として琵琶と尺八とオーケストラによる「ノヴェンバー・ステップス」(1967年)が作曲されたのである。尺八は、中国の唐を起源とし、日本に伝来、鎌倉時代から江戸時代の頃にかけて現在の形になったという。尺八は、真竹の根元を使い、7個の竹の節を含むようにしてつくる。このCDで尺八を演奏している横山勝也(1934年-2010年)は、福田蘭童らに師事。 昭和39年に2代目山本邦山,2代目青木鈴慕と尺八三本会を結成。1942年小沢征爾指揮のニューヨークフィルと武満徹の「ノヴェンバー・ステップス」を演奏以後、国際的にも活躍した。

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2014年6月24日

♪ 「日本の歌」のルーツを訪ねて 25 三味線


~吉田兄弟全国ツアー2006 “飛翔”実況完全録音盤~

<Disc.l>

冬の桜       作曲 吉田良一郎
ありがとう     作曲 吉田良一郎・矢島公租
もゆる        作曲 吉田良一郎
時の砂       作曲 吉田良一郎・井上鑑
りんご節~どんぱん節~こきりこ節~NIKATA 民謡
津軽じょんがら節 民話

<Disc.2>
RISING      作曲 吉田健一・井上鑑
OVERLAND BLUES  作曲 吉田健一
モダン        作曲 吉田健一
Panorama    作曲 吉田健一・井上鑑
いぶき        作曲 吉田良一郎・吉田健一
Sistina        作曲 吉田健一・井上鑑
バルセロナ     作曲 吉田健一・井上鑑
鼓動          作曲 吉田健一
WISH               作曲 井上鑑

全編曲 吉田兄弟・井上鑑

Produced by 吉田兄弟

All Songs Arrangement by 井上鑑・吉田兄弟

津軽三味観:吉田良一郎・吉田健一

音楽監督・KeyBoard:井上鑑

Drums:村石雅行
Bass:井上富雄
Violin:金子飛鳥
Guitar:古川昌義
尺八:山崎箜山
和太鼓 小泉謙一

CD:ソニーレコード SRCL 6526~7

 三味線は、中国の「三弦」を起源に持ち、沖縄から「三線」を改良した楽器として伝わって来たと言われている。そしてその後、日本を代表する楽器の一つにまで成長を遂げることになる。三味線には、「細棹」「中棹」「太棹」の3種類があるが、「細棹」は長唄や端唄、「中棹」は民謡、「太棹」は津軽地方の民謡(津軽三味線)に使われている。この三味線の演奏を現代の新しい感覚で捉え、そのダイナミックかつ繊細な感覚によって、日本国内に止まらず、アジア、アメリカ、ヨーロッパにまで津軽三味線のファン層を拡大させたのが“吉田兄弟”(兄の吉田良一郎と弟の吉田健一)である。、出身は、北海道登別市。津軽三味線全国大会などで数々の賞を受賞。1999年にアルバム「いぶき」でデビューし、10万枚を超すヒットとなった。2001年、「第15回日本ゴールドディスク大賞純邦楽アルバム・オブ・ザ・イヤー」を受賞。“吉田兄弟”は、多数のオリジナル曲を作曲し、幅広い層にリスナーを広げて行った。その演奏活動は日本国内に止まらず、アジア、アメリカ、ヨーロッパにまで拡大し、日本の三味線文化を世界に広めることに貢献している。従来の三味線の演奏は、日本の伝統ある長唄や端唄、民謡に限られていたのだが、“吉田兄弟”は、それらの枠から飛び出し、ジャズやロックの要素なども取り入れた、斬新な趣の三味線文化を創造したのである。

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2014年6月21日

♪ 「日本の歌」のルーツを訪ねて 24 筝


~春の海/箏の名曲~

春の海     宮城喜代子・筝/二世 青木鈴慕・尺八
さくら変奏曲   宮城数江・第一筝/小橋幹子・第二筝/菊地悌子・十七弦
瀬音        宮城数江・筝/菊地悌子・十七弦
落葉の踊り   宮城喜代子・三弦/宮城数江・筝/菊地悌子・十七弦
数え唄変奏曲  宮城数江・筝
さらし風手事   宮城喜代子・筝(低音)/宮城数江・筝(高音)
水の変態     宮城数江・歌・筝(本手)/宮城喜代子・筝(替手)

作曲:宮城通雄

CD:ビクター伝統文化振興財団 VZCG-510

 このCDは、宮城通雄作曲の筝(そう)の名曲が7曲収められているので、有名な筝曲を聴きたいというときには便利なCDである。日本人なら子供の頃から琴の音ぐらいは誰でも一度は聴いたことがある。ところが、「琴」と「筝」はどう違うのか?という問いに正確に答えられる日本人はあまり多くはないではないか。「箏」は、日本の伝統弦楽器であり、一般には「こと」と呼ばれ、「琴」の字を当てられるが、正式には「箏」が正しい。「琴(きん)」は別の楽器で、違いは、箏は柱(じ)と呼ばれる可動式の支柱で弦の音程を調節するのに対し、琴(きん)は柱が無い、ということなのだそうである。ことほど左様に日本人だから日本の歌や楽器は知っていると考えるのは、正しくないようだ。このCDに収められている「春の海」を作曲した宮城通雄(1894年ー1956年)は、神戸市生まれの作曲家・箏曲家で、十七絃の発明者としても知られている。14歳で第一作の箏曲「水の変態」を書き上げ、1919年、作曲家として正式にデビュー。古典楽器の改良や新楽器の開発を行い、十七絃、八十絃、短琴、大胡弓などを発明した。1929年に発表した「春の海」は、フランス人女流ヴァイオリニスト、ルネ・シュメーと競演し、世界的な評価を得た。そして「さくら変奏曲」にワルツが出てくるように、宮城通雄はクラシック音楽からも影響を受けて作曲活動を展開していた。1937年東京音楽学校(現東京藝術大学)教授就任、1948年日本芸術院会員、1950年第1回放送文化賞を受賞した。

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2014年6月19日

♪ 「日本の歌」のルーツを求めて 23 日本の民謡


~決定版 日本の民謡~

<ディスク:1>

そうらん節             初代 浜田喜一
江差追分(前唄・本唄・後唄)  初代 浜田喜一
北海盆唄                 江村貞一
津軽じょんがら節(新節)        橋本弥生
津軽山唄                 野呂義昭
津軽あいや節              三浦隆子
南部牛追唄               畠山孝一
秋田おばこ                佐藤サワエ
秋田船方節               須藤理香子
花笠音頭                 金沢明子
最上川舟唄               今泉侃惇
大漁唄い込み(「遠島甚句」入り)  鈴木正夫
長持唄                  鈴木 茂
さんさ時雨                藤 みち子
お立ち酒                 鈴木正夫
会津磐梯山                小杉真貴子
新相馬節                 鈴木正夫
相馬盆唄                 桃井可生
八木節             四代目 堀米源太
磯節                    藤 みち子

<ディスク:2>

木曽節                 江村貞一
小諸馬子唄              江村貞一
佐渡おけさ              小川竜翔
相川音頭           初代 浜田喜一
越中おわら節             加賀山 昭
帆柱起し音頭         初代 浜田喜一
山中節             三代目 米  八
郡上節(かわさき)           坪井三郎
串本節                  小杉真貴子
河内音頭                初音家賢次
安来節(男踊り歌)     二代目 出雲愛之助
音戸の舟唄          初代 浜田喜一
阿波踊り                峯野敏子
よさこい節               金沢明子
黒田節                 水戸祐二
おてもやん               市  丸
五木の子守唄             小杉真貴子
刈干切唄                佐藤 明
ひえつき節               那須 稔
鹿児島おはら節            前園とみ子

CD: 日本伝統文化振興財団(ビクターエンタテインメント) VZCG-8324~5

 日本には庶民の歌として全国各地に民謡があり、これまで歌い継がれてきた。これらの日本の民謡は、各地で自然発生的に生まれたというより、九州地方のハイヤ節が各地に唄い継がれ定着していったらしい。「ハイヤ」とは「南風(はえ)」と唄い出す民謡のことで、日本海沿岸から太平洋岸へ伝えられ、それが全国各地で、それぞれの郷土に合った民謡へと生まれ変わったのだという。戦後の一時期は“民謡ブーム”があり、ラジオからしょっちゅう全国各地の民謡が流れていたことを思いだす。このCDには、「そうらん節」をはじめ、誰もが知っている日本の代表的民謡が40曲収録されている。これらを聴き始めると、楽しく最後まで聴き通すことができる。やはり、日本人という共通する血が騒ぐのであろうか。クラシックの作曲家も、これまで日本の民謡を素材に多くの曲を作曲してきた。その中の一曲、外山雄三作曲「管弦楽のためのラプソディ」には、「あんたがたどこさ」「ソーラン節」「炭坑節」「串本節」などが採り込まれているが、NHK交響楽団が海外公演で演奏すると、現地の聴衆に大いに受けたという。イタリアに「カンツォーネ」があるように、日本には「日本の民謡」があるのである。

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2014年6月16日

♪ 「日本の歌」のルーツを訪ねて 22 エルンスト・ヘフリガー(ドイツ語による「日本の歌」)


野薔薇                山田耕筰・曲
中国地方の子守歌  山田耕筰・編
夏の思い出       中田喜直・曲
浜千鳥          弘田龍太郎・曲
ゴンドラの唄      中山晋平・曲
ちいさい秋みつけた  中田喜直・曲
AIYANの歌       山田耕筰・曲
宵待草          多忠亮・曲
叱られて         弘田龍太郎・曲
漁夫の娘        山田耕筰・曲
愛する人に          同
あわて床屋          同
唄                同

テノール:エルンスト・ヘフリガー(ドイツ語歌詞)

ピアノ:イリーナ・ニキーティナ

ドイツ語訳:村上紀子、マルグリット・畑中

 このCDは、スイス出身の名テノール歌手であったエルンスト・ヘフリガー(1919年ー2007年)が、ドイツ語訳された「日本の歌」を録音した貴重なCDである。ヘフリガーは、チューリッヒ音楽院で声楽とヴァイオリンを学び、1942年、バッハの「ヨハネ受難曲」のエヴァンゲリストを歌ってコンサート歌手としてデビュー。その後、ベルリン・ドイツ・オペラの首席リリック・テノールを務め(1952年~1974年)、同時にミュンヘン音楽大学の声楽科教授に就任し後輩の指導も当たった(1971年~1988年)。さらに日本では、草津国際音楽アカデミー&フェスティバルで長年に渡りマスタークラスで指導もした。1950年~1960年代が全盛時代で、この時、ヘフリガーは戦後のドイツオペラにおける代表的テノール歌手の地位を確立した。1966年ベルリン・ドイツ・オペラと共に初来日し、以後しばしば日本を訪れた親日家でもあった。ヘフリガーがドイツ語による「日本の歌」を歌うきっかけは「日本へは何回も来て、お世話になっている。その感謝の気持ちを歌で表わしたい」からだったという。このCDのプロデュースは息子のミヒャエル、ピアノ伴奏は息子の妻のイリーナ・ニキーティナが担当するなど、ヘフリガー一家挙げての親日家ぶりを窺わせる。

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2014年6月12日

♪ 「日本の歌」のルーツを訪ねて 21 グレッグ・アーウィン(英語による「日本の歌」)


I’m Longing for Spring   早春賦
Song of the Seashore   浜辺の歌
Tangerine Hill         みかんの花咲く丘
Moon Over the Desert   月の砂漠
The Blue-Eyed Doll     青い眼の人形
Shojoji              証城寺の狸囃子
Scolded Child         叱られて
This Old Road         この道
Autumn in the Country  里の秋
Dragonflies           赤とんぼ
My Country Home      故郷
Sunayama            砂山

歌:グレッグ・アーウィン(英語による歌/歌詞の英訳)

CD:ビクターエンタテイメント VICL-61131

 グレッグ・アーウィンは、アメリカ・ウィスコンシン州出身。ウィスコンシン州立大学で音楽、ミネソタ大学で演劇、その後、ハワイ大学の日本語学科を卒業。来日後、童謡や唱歌に関わる数多くのコンサートやイベントに参加。テレビ・ラジオの出演、CD制作など精力的な活動を展開。1995年初の童謡コンサートを開催した後、1998年ニューヨークで日本の児童音楽を紹介。“童謡の伝道師”とも呼ばれ、これまで様々な日本の童謡・唱歌を英訳し、自ら歌っている。2002年日本童謡協会「童謡文化賞」、同年日本大衆音楽協会「ミュージックフェスティバル童謡部門グランプリ」受賞など数多くの受賞歴を持つ。このCDのライナーノートでグレッグ・アーウィンは次のように書いている。「来日後しばらくして、『童謡・唱歌』の英語訳を依頼されました。初めて聴くジャンルの音楽でしたが、歌詞を聴き意味を理解するにつれ、そこに収められたメッセージと美しいメロディーに心を動かされていきました。日本と日本の人たちが私の心をとらえる何かがすべてそこに描かれていたからです。日本人の『心』を理解する手がかりを音楽に見つけたのでした。・・・収録曲のメインテーマである“幼年時代と望郷”は必ずや私たちの傷ついた心と魂に通じる扉の鍵を下ろし、その扉をそっと開いてくれることでしょう」

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