クラシック音楽 ニュース


2010年11月10日

第41回「サントリー音楽賞」、大野和士氏に決定

 サントリー芸術財団(代表理事・堤剛、鳥井信吾)は、わが国の洋楽の発展にもっとも顕著な業績をあげた個人または団体に贈る「サントリー音楽賞」の第41回(09年度)受賞者を大野和士氏に決定した。

 大野和士氏が内外の第一線で誰もが認める充実した活動を展開するようになって既に久しいが、とりわけ、09年の活躍ぶりには目を見張るべきものがあった。現在首席指揮者を務めるリヨン歌劇場では、1月のプロコフィエフ《賭博師》に続き、3月にはベルク《ルル》のタクトをとり、オーケストラから極めて艶やかな響きを引き出すとともに、キャストを見事に統率して、オペラ指揮者としての類い稀なる資質を改めて印象づけた。さらに、6月には、パリのオペラ座に前年に続いて客演し、シマノフスキ《ロジェ王》を指揮して、このオペラの持つ神秘主義的側面を鮮やかに描き出してみせた。

 大野氏は、7月に京都市交響楽団、九州交響楽団に客演したほか、11月、手兵リヨン歌劇場管弦楽団と来日し、マスネの《ウェルテル》の演奏会形式による上演や、フランス音楽をメインに据えたプログラムの演奏会を行い、フランス語のニュアンスとフランス音楽の色合いに対する絶妙の感覚を発揮した。加えて、大野氏が病院などの施設を対象とした催しや、「こどものためのワークショップ」などを限られた滞日期間中に積極的に行い、音楽と社会との関わりに目を向ける姿勢を堅持し続けている点も見逃せない。

 ヴェルディをはじめとするイタリアもの、モーツァルトからワーグナー、ベルクなどに至るドイツ・オーストリアのレパートリー、そしてシャリーノや細川俊夫などをはじめとする同時代作品など、兼ねてから定評のあった曲目に加え、フランスオペラの領域での力量を我が国の聴衆にも示した大野氏は、オペラハウスとコンサートホールの両面で、今や、さらに新たな地平へと歩みを進めるに至ったと見える。その成果は、本年度のサントリー音楽賞贈賞にまさに相応しいものであった。(サントリー:10年3月31日発表)

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