2011年4月26日
サントリー芸術財団は、わが国の洋楽の発展にもっとも顕著な業績をあげた個人または団体に贈る「サントリー音楽賞」の第42回(2010年度)受賞者を渡邊順生(わたなべ よしお)氏に決定した。
<贈賞理由>
チェンバロ奏者として、フォルテピアノ奏者として、また古楽指揮者としての渡邊順生氏の2010年における活動は、深い思索性と繊細な感受性の結合というかねてからの美質に円熟した説得力を加えたもので、日本の音楽界における質の部分を代表する高みに達していたと思われる。
<略歴>
渡邊順生(わたなべ・よしお) チェンバロ
1950年4月29日、神奈川県・鎌倉生まれ。ピアノを宅孝二、チェンバロを小林道夫らに師事。1973年、一橋大学社会学部卒業と同時にオランダへ留学、アムステルダム音楽院にてチェンバロをグスタフ・レオンハルトに師事。
1977年最高栄誉賞付ソリスト・ディプロマを得て同音楽院を卒業、さらにプリ・デクセランスを受賞した。その後ヨーロッパ各地にて演奏活動を行ない、1980年に帰国。以来、古楽器演奏の啓蒙と普及に努め、精力的な演奏活動を展開し、チェンバロ、フォルテピアノ、クラヴィコード奏者及び指揮者として活躍している。
1984年古楽器のオーケストラ「ザ・バロックバンド」を結成し、モンテヴェルディ、バッハ、ヘンデル、モーツァルト、ベートーヴェンなどの作品を演奏した。
フランス・ブリュッヘン、アンナー・ビルスマ、ジョン・エルウィスをはじめヨーロッパの名手・名歌手たちと多数共演、CDも多数リリースしており、「モーツァルト:フォルテピアノ・デュオ」(ALMレコード)で2006年度レコード・アカデミー賞(器楽曲部門)を受賞した。
また、楽譜の校訂や論文の執筆なども手がけ、2000年秋、東京書籍より大部の著書「チェンバロ・フォルテピアノ」(四六判868頁)を刊行(2009年2月に第3刷刊行)、鍵盤楽器の歴史に関する包括的な研究で注目されると共に、同書に準拠したコンサート・シリーズやCDでも大きな反響を呼んだ。
最近では、横浜における「山手プロムナード・コンサート」で様々な形態の音楽会を企画するなど、啓蒙的な活動にも積極的に取り組んでいる。国立音楽大学、桐朋学園大学、東京音楽大学及び上野学園大学講師。