2023年6月16日
オーストリア出身の女性ピアニストのイングリット・ヘブラーが死去した。享年93歳。
イングリット・ヘブラーは、ポーランド人の両親のもと、1929年、ウィーンに生まれる。10歳までポーランドで過ごし、その間にピアノを学ぶ。第二次世界大戦の勃発によってザルツブルクに移住、同地のモーツァルテウム音楽院に入学。1949年にモーツァルテウム音楽院を卒業後、ウィーン音楽院(現在のウィーン国立音楽大学)に入学。その後ジュネーヴ音楽院で学ぶ。
1952年と1953年「ジュネーヴ国際音楽コンクール」第2位、1954年「ミュンヘン国際音楽コンクール」第1位、「ウィーン国際シューベルト・コンクール」第1位。同年ザルツブルク音楽祭に初めて出演し、モーツァルトのピアノ協奏曲第12番を弾いて正式にデビューを果たす。デビュー後、国際的な演奏活動を開始し、ウィーンの古典派音楽をはじめ、シューマン、ショパン、ドビュッシーなども得意として活躍し、特に気品に満ちたモーツァルトの演奏で高い評価を獲得た。
1966年以来、数多く来日して日本にも多くのファンがいた。モーツァルトのピアノ曲(協奏曲も含む)をフィリップスに全て録音し、高い評価を得ている。この他にJ.S.バッハやJ.C.バッハ、ハイドン、ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、ショパンなどにも優れた録音を残している。なお、モーツァルトのピアノソナタ全曲を1980年代後半にDENONに再録音している。
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2023年5月29日
2023年度「武満徹作曲賞」の本選(審査員:近藤 譲)演奏会が5月28日、東京オペラシティコンサートホールで、角田鋼亮指揮東京フィルハーモニー交響楽団で行われ、マイケル・タプリン(イギリス)が優勝した。
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第1位 マイケル・タプリン(イギリス)
第2位 ギジェルモ・コボ・ガルシア(スペイン)
山邊光二(日本)
第3位 ユーヘン・チェン(中国)
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2023年5月19日
「大阪国際室内楽コンクール&フェスタ2023」が大阪の住友生命いずみホールを中心に5月12日から18日まで開催され、入賞団体が次の通り決定した。
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コンクール・第1部門(弦楽四重奏)
第1位 クァルテット・インダコ(イタリア)
第2位 ほのカルテット(日本)
第3位 テラ弦楽四重奏団(アメリカ)
コンクール・第2部門(ピアノ三重奏/四重奏)
第1位 カピバラ・ピアノ・クァルテット(ドイツ)
第2位 トリオ・パントゥム(フランス)
第3位 トリオ・ミケランジェリ(ドイツ)
フェスタ(6人以内の室内楽演奏)
メニューイン金賞 テンゲル・アヤルグー(モンゴル)
銀賞 クインテット・ル・バトー・イーヴル(フランス)
銅賞 スタス&タチアナ(アメリカ)
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2023年5月09日
黒人オペラ歌手の草分けとして知られる米メゾソプラノ歌手のグレース・バンブリーが、ウィーンの病院で死去した。享年86歳。
グレース・バンブリーは、1937年に米ミズーリ州セントルイスで生まれる。激しい人種差別の時代に育ち、地元音楽学校への入学を拒否されたが、ボストン大学やノースウェスタン大学に進学。ウェスト音楽アカデミーではロッテ・レーマン(1888年―1976年)に師事。1960年、パリのオペラ座で「アイーダ」のアムネリス役でデビュー。以後40年近くにわたり輝かしい功績を残した後、1997年に引退していた。
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2023年5月07日
20世紀を代表するピアノ三重奏団「ボザール・トリオ」の創設者で、ソリストとしても活躍した世界的ピアニスト、メナヘム・プレスラーが、ロンドンで死去した。享年99歳。
ピアノのメナヘム・プレスラー(1923年―2023年)は、ドイツ、マグデブルク出身。ナチスによる迫害を逃れて米国に亡命。17歳の時、サンフランシスコで「クロード・ドビュッシー賞」を受賞。以後、国際的な演奏活動を開始。2012年はドイツに帰化した。
ボザール・トリオは、1955年にメナヘム・プレスラーによって結成され、初代メンバーはヴァイオリンのダニエル・ギレとチェロのバーナード・グリーンハウスであった。その後、メナヘム・プレスラー以外はメンバーが変わっていった。全盛時代は、年間に120回以上のコンサートをこなした。レパートリーは幅広く、その録音は、ピアノ三重奏曲の名曲はほとんど網羅していたと言ってもいいほど。同ピアノ三重奏団は、2008年の「ルツェルン音楽祭」でのコンサートを最後に解散したが、メナヘム・プレスラーだけは、以後も現役のピアニストとして活躍していた。
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2023年4月29日
指揮者の原田慶太楼が、「サー・ゲオルク・ショルティ コンダクター賞」を受賞した。
この賞は、米ショルティ財団により、アメリカに居住権を持つ若い指揮者の活動を支援する目的で設けられた。
原田慶太楼は、これまで「同キャリア支援賞」を6回受賞してきたが、この度、トップ賞となる「同コンダクター賞」を日本人として初めて受賞した。
指揮の原田慶太楼(1985年生まれ)は、東京都品川区出身。2004年イリノイ大学に入学、2006年マーサー大学に入学。2006年メーコン交響楽団のアシスタント・コンダクターに就任。アメリカジョージア州サヴァンナ・フィルハーモニックの音楽&芸術監督、アリゾナ・オペラ団アソシエイト・コンダクター、リッチモンド交響楽団アソシエイト・コンダクター、フェニックス・ユース・シンフォニー音楽監督、ツーソン交響楽団「TSOロック・ザ・FOX」首席客演指揮者、シエラ・ビスタ交響楽団首席客演指揮者などを歴任。2015年シンシナティ交響楽団アソシエイトコンダクター、2017年サヴァンナ・フィルハーモニック音楽&芸術監督、2021年東京交響楽団正指揮者に就任。2022年「渡邉曉雄音楽基金音楽賞」受賞。2022年「齋藤秀雄メモリアル基金賞」受賞。2023年「サー・ゲオルク・ショルティ コンダクター賞」受賞。
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2023年4月13日
月刊「レコード芸術」(音楽之友社刊)が、2023年7月号(6月20日発売)をもって休刊となる。
「レコード芸術」は、クラシック・レコード評論の専門誌として1952年3月に創刊され、70年を超えて、わが国のクラシック音楽ファンに愛読されてきた。
しかし、近年の当該雑誌を取り巻く大きな状況変化、さらに用紙など原材料費の高騰等の要因により、休刊のやむなきに至ったという。
毎月のCD評や毎年発表される「レコード・アカデミー賞」は、わが国のクラシック音楽界の礎となってきただけに、その休刊が惜しまれる。
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2023年4月01日
イスラエルのテルアビブで開催された第17回「ルービンシュタイン国際コンクール」で黒木雪音が第3位に入賞した。
ピアノの黒木雪音は、1998年生まれ。昭和音楽大学器楽学科ピアノ演奏家コースで学ぶ。7歳で東京ニューシティ管弦楽団と共演し、これまでに国内外数多くのオーケストラと共演。またロシア、リトアニア等の音楽祭にも招かれ、数多くのコンサートに出演する。第1回ハノイ国際ピアノコンクール(ベトナム)A部門第1位、及び ベストショパンプレイヤー賞、 第1回国際青少年フェスティバルコンクール(カザフスタン)“アスタナ・ ピアノパッション”ミドル部門 第1位、第15回ショパン国際ピアノコンクール in ASIAコンチェルトB部門金賞、第7回 福田靖子賞選考会 福田靖子賞(第1位)、第10回 バリスドバリョーナス国際青少年ピアノ&バイオリンコンクール(リトアニア)C 部門 グランプリ・全部門総合優勝、第41回ピティナ・ピアノコンペティション G 級金賞、第19回ショパン国際コンクールin ASIAプロフェッショナル部門金賞受賞。 その他に、第11回千葉市芸術新人賞受賞、第9回岩谷時子賞Foundation for Youth受賞。2022年第12回「ダブリン国際ピアノコンクール」第1位。同年「フランツ・リスト国際ピアノコンクール」第1位。2023年第17回「ルービンシュタイン国際コンクール」第3位。
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2023年3月31日
第54回(2022年度)「サントリー音楽賞」は指揮者の井上道義が受賞した。
<贈賞理由>
2022年は、ショスタコーヴィチ作品において、スペシャリストならではの充実ぶりをみせた。2月に「交響曲第5番」(読売日本交響楽団)、「第15番」(オーケストラ・アンサンブル金沢)、「第1番」(東京フィルハーモニー交響楽団)、3月には「第8番」(名古屋フィルハーモニー交響楽団)、11月に「第10番」(NHK交響楽団)といった具合。鬼気迫るラインナップではないか。さらに藤倉大の新作「Entwine」(読売日本交響楽団、1月)、クセナキスの「ケクロプス」(東京フィルハーモニー交響楽団、2月)、そして伊福部昭の「シンフォニア・タプカーラ」(NHK交響楽団、11月)など、重量級の作品をこなすとともに、オール・プロコフィエフ・プログラム(兵庫芸術文化センター管弦楽団、4月)、偽作をあえて並べて見せた「モーツァルト+」(神奈川フィルハーモニー管弦楽団、5月)など、凝ったプログラミングも冴えわたっており、さらに年末にはNHK交響楽団とのベートーヴェン「交響曲第9番」で、なんともふくよかで、どこか懐かしい音の大伽藍を築いて見せた。これだけ骨のある活動を継続してきた指揮者は他に見当たらない。
指揮の井上道義(1946年生れ)は、東京都出身。桐朋学園大学で指揮を齋藤秀雄に学ぶ。1971年「グィード・カンテッリ指揮者コンクール」優勝。1983年~1988年 新日本フィルハーモニー交響楽団音楽監督。1990年~1998年 京都市交響楽団音楽監督兼常任指揮者。1998年 フランス政府より芸術文化勲章「シェヴァリエ」を受賞。2007年~2018年オーケストラ・アンサンブル金沢ならびに石川県立音楽堂アーティスティック・アドヴァイザー音楽監督。2014年~2017年大阪フィルハーモニー交響楽団首席指揮者。2016年第24回「渡邉暁雄音楽基金」特別賞、「東燃ゼネラル音楽賞」受賞。第54回(2022年度)「サントリー音楽賞」受賞。2024年で引退することを表明している。
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2023年3月31日
第32回「出光音楽賞」は、亀井 聖矢(ピアノ)、阪田 知樹(ピアノ)、森野 美咲(ソプラノ)が受賞した。
今後、授賞式と受賞者による「出光音楽賞受賞者ガラコンサート」(日時・会場未定)を開催し、その模様はテレビ朝日系「題名のない音楽会」で放送予定。
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亀井 聖矢(ピアノ/21歳)
2001年12月20日、岐阜県岐阜市生まれ。愛知県立明和高等学校音楽科を経て、飛び入学特待生として桐朋学園大学に入学。現在、桐朋学園大学4年在学中(2023年2月現在)。2021、2022年度公益財団法人ロームミュージックファンデーション奨学生。2022年度公益財団法人江副記念リクルート財団奨学生。2022年「ロン=ティボー国際コンクール」第1位、併せて「聴衆賞」「評論家賞」の2つの特別賞を受賞。4歳よりピアノを始める。2019年第88回「日本音楽コンクール」ピアノ部門第1位、及び聴衆賞受賞。第43回「ピティナ・ピアノコンペティション」特級グランプリ、及び聴衆賞受賞。2022年「マリア・カナルス・バルセロナ国際音楽演奏コンクール」第3位受賞。「ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール」セミファイナリスト。
阪田 知樹(ピアノ/29歳)
1993年12月26日、愛知県名古屋市生まれ。東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校、及び同大学を経て、ハノーファー音楽演劇大学にて学士、修士首席修了、現在同大学院ソリスト課程に在籍。世界的ピアニストを輩出し続ける「コモ湖国際ピアノアカデミー」の最年少生徒として認められて以来、イタリアでも研鑽を積む。パウル・バドゥラ=スコダ氏に10年に亘り師事。作曲を永冨正之、松本日之春の各氏に師事。2021年世界三大音楽コンクールの一つ「エリザベート王妃国際音楽コンクール」ピアノ部門第4位。2016年「フランツ・リスト国際ピアノコンクール(ハンガリー・ブダペスト)」第1位、六つの特別賞。コンクール史上、アジア人男性ピアニスト初優勝の快挙。第14回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールにて弱冠19歳で最年少入賞。イヴァン・モラヴェッツ氏より高く評価され「イヴァン・モラヴェッツ賞」、「ピティナ・ピアノコンペティション」特級グランプリ、聴衆賞等五つの特別賞、「クリーヴランド国際ピアノコンクール」にてモーツァルト演奏における特別賞、「キッシンゲン国際ピアノオリンピック」日本人初となる第1位及び聴衆賞。東京クヮルテットメンバー、ブレンターノ弦楽四重奏団との共演など室内楽奏者としても活躍。2017年「横浜文化賞」文化・芸術奨励賞受賞。
森野 美咲(ソプラノ/34歳)
1988年10月24日、岡山県倉敷市生まれ。ウィーン在住。岡山城東高等学校、東京藝術大学卒業、ウィーン国立音楽大学修士課程首席修了。第27回「ヨハネス・ブラームス国際コンクール」声楽部門にて日本人初優勝、第87回「日本音楽コンクール」声楽部門にて第1位受賞。第56回「ドヴォルザーク国際声楽コンクール」歌曲部門第2位、オペラ部門第3位受賞。これまでにウィーン楽友協会やコンツェルトハウス等で数々のコンサートに出演。2019年ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団夏のアカデミー「偽の女庭師」題名役に抜擢、オーストリアツアーを成功させ、プロ野球オールスター戦開幕式にて甲子園球場で国歌独唱を務めた。2021年エットリンゲン音楽祭「こうもり」アデーレ役、ルツェルン劇場にて現代オペラ「Zolle」を好演。2022年バーデン市立劇場「椿姫」題名役でデビューを飾り、ルツェルン劇場にてデュサパン作曲「ペレラ-煙の男-」に女王及びアローロの娘役で一人二役を好演。ロームミュージックファンデーション奨学生、文化庁新進芸術家海外研修制度研修員。「五島記念文化賞」オペラ新人賞、「岡山芸術文化賞」グランプリ、「マルセンスポーツ文化賞」マルセン文化大賞、「山陽新聞奨励賞」、エネルギア文化・スポーツ財団「エネルギア賞」、「福武教育文化賞」受賞。
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