2020年4月03日
第19回(2019年度)「佐治敬三賞」は歌劇「THE 鍵 KEY(ザ キー)」が受賞した。
歌劇「THE 鍵 KEY(ザ キー)」
日時:2019年5月19日(土)、25日(土)、26日(日)
会場:旧平櫛田中邸アトリエ(東京都台東区上野桜木)
作曲・演出:フランチェスカ・レロイ
原作:谷崎潤一郎「鍵」1956年出版
【贈賞理由】
谷崎潤一郎の『鍵』を原作にした異形のオペラである。上演場所は劇場のひとつの舞台ではなく、どこかの家の複数の部屋でなければならない。それなりに大きな洋館か日本家屋。そこの部屋に、歌手やダンサーや器楽奏者が散らばり、同時進行的に演じる。言わば「複室内オペラ」である。観客・聴衆は屋内を自由に移動しつつ鑑賞する。その意味では「遊歩オペラ」である。そういう作品の形態が、『鍵』の小説としての構造を、音楽劇に転換するのに、よく適っている。なぜなら『鍵』は、主にひとつの家を舞台にして、そこに住み、あるいは出入りする登場人物の欲望の葛藤を、それぞれが一人称で語り、組み合わせられ、その相反が物語を乱反射させ、混乱させてゆく小説なのだから。