2013年3月20日
第44回(2012年度)サントリー音楽賞は、メゾソプラノの藤村実穂子に決定した。 賞金は700万円。
贈賞理由は次の通り。
メゾソプラノの藤村実穂子の演奏活動は、2002年のドイツ・バイロイト音楽祭デビューこのかた、欧米のクラシック音楽界において欠かせない存在となった。そのつねに安定した歌唱、とりわけドイツ語の的確なディクションは、ヨーロッパの批評家も脱帽する域に達している。
演奏活動は当該年度(2012年)においても、パリ・シャンゼリゼ劇場におけるワーグナー「パルジファル」のクンドリ役(3月)、ロンドン・コヴェントガーデン歌劇場における同「神々の黄昏」のヴァルトラウテ役(10月)など、その活躍はとどまるところを知らない。
それに加えて、当該年度の日本における演奏活動では、とりわけドイツリートにおける成果が目覚ましい。シューベルト、マーラー、ヴォルフ、R・シュトラウスの歌曲を取り上げたリサイタル(11月、フィリアホール、紀尾井ホール)もさることながら、マーラー「大地の歌」(11月、いずみホール、室内合奏版)が、その白眉と言ってよいだろう。また、マリス・ヤンソンス指揮バイエルン放送交響楽団来日公演のベートーヴェン「交響曲第9番」では、高度なアンサンブル能力をも示している。
藤村実穂子は、東京芸術大学音楽学部声楽科卒業、同大学院修了、ミュンヘン音楽大学大学院留学中にワーグナー・コンクール(バイロイト)で事実上の優勝、マリア・カナルス・コンクール優勝など数々の国際コンクールに入賞。2002年日本人として初めて主役級でバイロイト音楽祭デビューし、「スターが誕生した」などの賞賛を浴びた。以来、9年連続全て主役級で出演。現在、欧米で「現代最高のメゾ」の名を得ている。