2013年5月06日
44年にわたりニューヨークを拠点に世界を舞台に活躍してきた室内楽の至宝・東京クヮルテットが、2013年5月の来日公演の後、6月に全ての活動を終止する。今回の5月の来日公演は、日本の聴衆にとって、彼らの演奏を体験できる、最後のチャンスとなる。
東京クヮルテットは、故斎藤秀雄によって多大な影響を受けた日本人4人(第1ヴァイオリン:原田幸一郎、第2ヴァイオリン:名倉淑子、ヴィオラ:磯村和英、チェロ:原田禎夫)により、1969年ジュリアード音楽院で結成された。1970年ミュンヘン国際コンクールで圧倒的優勝以来、世界の楽壇の最高峰の弦楽四重奏団として、卓越した技巧と優美な演奏スタイルで聴衆を魅了し続けてきた。
東京クヮルテットの演奏についてヴィオラの磯村和英は「僕らは先駆的なカルテットだったと思う。第1ヴァイオリンがリーダーとして音楽作りを導くカルテットというのが昔は一般的であった。だが、僕らは民主的で、演奏するときも各自意見を出す。数年前にベートーヴェンを全曲録音した時も、テンポをどう設定するか徹底的に議論した」(日本経済新聞2013年4月3日付)と語る。
現在のメンバーは、第1ヴァイオリン:マーティン・ビーヴァー、第2ヴァイオリン:池田菊衛、ヴィオラ:磯村和英、チェロ:クライヴ・グリーンスミス。使用楽器は、世界で6セットしかないストラディヴァリのカルテット・セットのひとつ「パガニーニ・カルテット」(パガニーニが所有し、演奏していたもの)。1994年に日本音楽財団が購入し、1995年から東京クヮルテットに長期貸与されている。教育活動は、1976年以来、イェール大学のレジデント・カルテットとして後進の育成に携わってきたほか、欧米とアジアで定期的にマスタークラスを開催してきた。
これまで、本拠地をニューヨークに置き、毎年欧米を中心に100以上のコンサートを行ってきた。2012年―2013年のシーズンでは、アメリカ、ウィーン、パリ、ロンドンなど、世界主要都市でのコンサートを予定しており、44年間の活動に終止符を打つ。なお、日本公演のスケジュールは次の通り。5月15日いずみホール(大阪)、5月16日東京オペラシティ(東京)、5月17日フィリアホール(横浜)、5月18日青山音楽記念館(京都)、5月20日武蔵野市民文化会館(東京)、5月21日王子ホール(東京)。