2012年6月29日
ハンス・ロット:交響曲第1番
:管弦楽のための組曲
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
管弦楽:フランクフルト放送交響楽団
CD:ソニー・ミュージック・ジャパン SICC-1537
マーラーのウィーン音楽院時代の友人であり、狂気のうちに26歳で夭逝したオーストリアの作曲家、ハンス・ロットの交響曲第1番。「ブルックナーとマーラーをつなぐミッシング・リンク」とも称され、19世紀末ウィーンに渦巻いていた後期ロマン派の爛熟を宿した大作である。現在絶好調のパーヴォ・ヤルヴィがフランクフルト放送響の豊かなソノリティを駆使して、作品に内包するドラマや軋みを緻密に、かつ劇的に描き出す。同時に世界初録音となる「管弦楽のための組曲 変ロ長調」をカップリング。非業の最期を遂げたロットに対し、マーラーはその天才ぶりを「彼と僕とは同じ土壌に生え、同じ空気を吸って育った樹の異果みたいなものだ」と称賛したが、惜しむらくは、ロットは繊細すぎた。マーラーのようにがむしゃらに権力を得てウィーン宮廷歌劇場の音楽監督にのぼりつめるような手練手管もなく、ブラームスからまさにこの交響曲を酷評されたことでひどく憔悴し、失意から脱することが結局できないまま、最終的には神経を病んで精神病院で生涯を終えた。