2023年6月29日
ワーグナー:楽劇「パルジファル」(全曲)
演出:ヴィーラント・ワーグナー
指揮:ハンス・クナッパーツブッシュ
管弦楽:バイロイト祝祭管弦楽団
アンフォルタス:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
ティトゥレル:ヘルマン・ウーデ(バス・バリトン)
グルネマンツ:ルートヴィヒ・ウェーバー(バス)
パルジファル:ラモン・ヴィナイ(テノール)
クリングソル:グステュ・ナイトリンガー(バリトン)
クンドリー:マルタ・メードル(メゾソプラノ)
第1の聖杯騎士:ヨーゼフ・トラクセル
第2の聖杯騎士:アルフォンス・ヘルヴィッヒ
小姓、花の乙女:イルゼ・ヘルヴィヒ、フリードル・ペルティンガー、パウラ・レンヒナー、ドロテア・ジーベルト、ユッタ・ヴィルピウス(以上ソプラノ)、エリーザベト・シュルテル(メゾソプラノ)
アルト独唱:マルタ・メードル(メゾソプラノ)
合唱:バイロイト祝祭合唱団
録音:1955年8月16日バイロイト祝祭劇場(ライヴ録音)
CD:キングインターナショナル(PROFIL PH-23002)4CD
このCDは、クナッパーツブッシュが指揮した1955年8月16日のバイロイト音楽祭の「パルジファル」全曲盤ライヴ録音盤。クナッパーツブッシュは1951, 52, 53〜64年まで毎年バイロイト音楽祭で「パルジファル」を指揮した。このうち55年の回だけは何故か世に出ず、録音そのものがないと思われていた。しかし2022年3月にProfilレーベルから第2幕のみリリースされ話題となり、キングインターナショナルは、Profil社と交渉、ついにバイエルン放送所蔵の音源が全曲盤として日の目を見た。
指揮のハンス・クナッパーツブッシュ(1888年―1965年)は、一時代を画したドイツの大指揮者であった。その活躍した時代がフルトヴェングラー(1886年―1954年)やカラヤン(1908年―1989年)などとダブルため、これらのの名声の陰に隠れ、ある意味ではその分損をした指揮者であったのかもしれない。それとフルトヴェングラーやカラヤンがかなり幅広いレパートリーを持っていたのに対し、クナッパーツブッシュは、特にワーグナーやブルックナーなどのドイツもののスペシャリストとしての印象が圧倒的に強い。ワーグナーやブルックナーの愛好者にとっては、フルトヴェングラー以上に神様的存在であったのがクナッパーツブッシュということになろう。バイエルン国立歌劇場音楽監督を歴任した後、1951年にバイロイト音楽祭に初出演し、「ニーベルングの指環」、「ニュルンベルグのマイスタージンガー」を指揮している。以後、死の前年の1964年まで、毎年のようにバイロイト音楽祭に登場している。このことからも分る通り、クナッパーツブッシュはワグナーに心酔していた。しかし、当時のヒットラーがワグナーを重要視していたにも関わらず、クナッパーツブッシュはヒットラーからは良く思われていない。フルトヴェングラーがヒットラーともうまく対応していたのとは、如何にも対照的だ。多分、クナッパーツブッシュは、根っからの芸術家肌で、政治との関わりを嫌っていたのではなかろうか。それだけクナッパーツブッシュは純粋のワグネリアンといえそうだ。